「NISSAN」が安売りブランドに
19年度、日産の北米事業の売上高は5兆1405億円で159億円の営業赤字だった。販売台数は約15%減の162万台。18年度も営業利益は720億円で売上高営業利益率はわずか1.1%。規模だけが膨らみ、中身が伴っていなかったことが台数の急減と収益の悪化として露呈している。
「ホンダを抜くのも時間の問題だ」。15年2月、当時、日産の北米事業を統括していたホセ・ムニョス副社長(現在は退社)はこうぶち上げた。相次ぐ新車の投入で米国の販売台数は伸び、シェアでホンダに肉薄。16年度までに米国でのシェアを10%に引き上げる計画の達成にも自信を見せていた。しかしその強気はあるからくりに支えられていた。「ステアステップ・プログラム」。ディーラー向けの報酬制度で、一定の販売目標を達成すると日産から報酬金が与えられるというものだ。シェア目標達成のために導入した仕組みだが、同じ日産ディーラー同士でも価格競争が起こるなど、過度な値引きがブランド力をむしばんでいった。
奨励金を通じた販売促進策は常套手段だ。ただ商品力とのバランスが崩れると「依存度」が高まる。日産の場合、小型車からピックアップトラックまで幅広いラインアップを揃えたものの、日産全体で新興国に注力するようになったこともあり「米国への新車投入が手薄になっていた」(日産)。西川広人・前社長は19年に北米事業の体質転換を宣言し、現在ではステアステップ・プログラムそのものは廃止したとみられるが、その反動で販売台数が急減した。今も完全には依存から抜け出し切れていない。
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