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生産能力を2割縮小する構造改革プランを打ち出した日産自動車。リストラに伴う損失もあって2020年3月期の業績は約6700億円の最終赤字に転落した。さらに深刻なのは、営業損益が404億円の赤字であるという点だ。ライバルが次々に新車を出してくる中、肝心の商品はフルモデルチェンジから時間がたった「老兵」ばかり。弱い商品がブランド力の毀損につながり、さらに販売力低下を招く。販売現場ではそうした悪循環に陥りつつある。

 「ローグですか? 3000ドルの値引きでいかがでしょうか」。
米ニューヨーク州北部にある日産自動車の販売店。6月初めに連絡をすると、女性の販売担当者はこう切り出した。

米国の販売店に並ぶ日産の主力SUV「ローグ」(写真:AP/アフロ)

 「ローグ(日本名:エクストレイル)」は日産の主力SUV(多目的スポーツ車)で、2019年の北米での販売台数は約35万台。北米市場の売れ筋はセダンからSUVやピックアップトラックなどに移っており、主力セダン「アルティマ」「セントラ」などを大きく上回る日産の最量販車種だ。3000ドルの値引きは約2万5000ドルからの車両価格の1割以上に相当する。こちらから値引きを打診したわけでもないが、「わかりやすい値引きがお客には受けますから」(販売担当者)。

 日産は5月28日、23年度までの構造改革プラン「NISSAN NEXT」を発表した。同日開いた記者会見で、内田誠CEO(最高経営責任者)は「十分に向き合ってこなかった失敗を認め、正しい方向に向かう。そのために選択と集中を徹底する」と語った。まず掲げるのが、拡大路線によってだぶついた資産の整理だ。

 インドネシア工場やスペインのバルセロナ工場を閉鎖し、23年度には生産能力を18年度比2割減の540万台とするなど、「身の丈」にあったサイズまで事業規模を縮小する。減らすのは生産能力だけではない。車種数を2割、一般管理費は15%減らして約3000億円の固定費削減を計画する。大手術を伴うが、内田CEOは「リストラではなく財務基盤の強化」とし「必ず日産を成長軌道にのせる」と強調する。

 カルロス・ゴーン元会長の逮捕による経営の混乱に新型コロナウイルスの世界的な感染拡大。次々に問題が降りかかるなかで進んできたのが、日産の稼ぐ力の劣化だ。本業のもうけである連結営業損益は19年度に404億円の赤字(18年度は3182億円の黒字)。新型コロナの影響が本格化する前の段階で、そもそもの自動車ビジネスで稼げていない。特に立て直しが欠かせないのが、世界販売の約3分の1割を占める米国市場だ。