第5波が収束し、誰もがおずおずと「これで終わるのか?」と思ったまさにそのタイミングでやってきた変異ウイルス「オミクロン」。11月末には成田空港の検疫で感染者が見つかりました。

 オミクロンがどの程度の脅威になるのかはまだ分かりませんが、今後もさらなる変異ウイルス、あるいは新型コロナウイルス以外の病原体が世界に現れることは、残念ながら間違いなさそうです。子どもの頃、特撮番組に週替わりで登場する怪獣のカタカナ名前に胸をときめかせたこともありますけれど、実際にその世界に生きていたら、「またか……」と、さぞうんざりするのだろう、とか想像してしまいます。

 怪獣ならぬウイルスといやおうなく共存する世界で、わたしたちはここまで正しく行動してきたのか。そして、この先、「『科学』が十分に確実な答えを出せない」課題に対して、どのような考え方で生きていけばいいのか。そんなことを米国研究機関在籍のウイルス免疫学者、峰宗太郎先生と話し合って本を作っていました。オミクロンをきっかけに、正体不明の変異ウイルスに対して「わたしたちが正しく行動する」とはどういうことなのか考えてみたいと思います。お付き合いください。(担当編集Y)

オミクロンであろうが、考え方と対応策は変わらない

―― このタイミングで、WHOによって名前が付けられる(=懸念される変異体、などとされる)変異ウイルスが現れるとは。そして、根っから小市民の私としては「本のセールスにどう影響するだろう」と、まっさきに考えてしまうのです。情けない。

峰 宗太郎先生(以下、峰):Yさん、そんなに素直な物言いをしていいんですか(笑)。まあ、ちょっとそういうところはありますよね。本当にいろんなことが起こりますし、「次々と状況が変わる」という事態そのものが、長く続いているわけです。

峰宗太郎先生
峰宗太郎先生

―― ですよね。年末に向けて第5波が収束して「もう新型コロナの本とか、いいよ」というふうになるのかと思っていたら、何か緩んだ気持ちにビンタをかますようなタイミングでオミクロンが出てきたという。これはこの本には吉か凶か……すみません、不謹慎で。

:いや、いや、確かに様々なビジネスに影響はすると思いますね。仮にオミクロンが大流行になると、社会の雰囲気ががらっと変わる可能性もゼロではありませんよね。

―― そうですよね。とはいえ、峰先生のお話を聞いていただけの私が偉そうに言うのも何ですけれど、やっぱり、この本を作ってよかったと改めて思います。特に変異ウイルスのところ、たっぷり語っていただいたじゃないですか、今、実は読み返していたんですけれど……。

:どうですか。

―― 「オミクロン」が出てきたのが校了の直後で言葉としては入れられませんでしたが、変異ウイルスへの考え方そのものはまさに今読むと役に立つものが入っているのではないか、と、実は内心ほっとしています(笑)。

:なぜオミクロンについてもそう言えるかと言いいますと、Yさんと初めてお会いした2020年の春から、新型コロナに対する基本的な考え方って特に変わっていないからなんですよね。わたしたちが感染症に対してできることって、実は決まっていて、感染対策も大きくは変わらない、変えようがないということがまずあります。そして、もちろん「懸念される変異体」レベルの変異ウイルスの登場は大きなトピックなのですが、そこでアクションを起こすべき人は、まずは国や自治体の公衆衛生担当部門のプロなど、そしてウイルス学者。そのあたりが騒いでいればいい話なんですよ。

―― それはなぜかと言えば?

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