:(笑)じゃ、ごく簡単に言えば、個人で行う対策が変わらない以上は、考えるべきことって、もうマインドセットの問題なんですよね、これは。浮足立たないとか、騒がないとか、冷静に情報と向き合うとか、本や連載で散々話した、そういうことの重要さが今、試されているのだと思います。さっきも言った、ちょうど去年の12月に出した記事がありましたよね。

―― こちらですね。「新型コロナの変異は『当たり前』の話、騒げば騒ぐだけ損」(2020年12月28日掲載)。

:あれで言っていたことが、1年かけてじわじわ理解が広がってきて、今の日本社会は比較的冷静な対応、マインドセットになっているのじゃないかな、という話です。

―― なるほど。何度でも「大変だ大変だ」と同じパニックが起こるんだけど、繰り返しているうちに、「これ、騒ぎ過ぎなんじゃない?」という人が、それこそワクチンの接種で感染しないように、じりじり増えている……ことを期待したいですね。楽観的すぎると読者の方はおっしゃるかもしれませんけど。あ、さっきおっしゃったレジリエンスってまさにそういうことなのかもしれないですね。

:はい、レジリエンスって、マインドセットも重要な要素なんですよ、きっと。危機感を煽って騒ぎたい人は残念ながら減らない、というか変わらないのです。誰がどう言っても毎回騒ぐわけです。前に騒いだことの検証とか反省とかそういったことはせずに、毎回なにか話題があると騒ぐ。

 だけどそれに引っ張られたり、振り回されたりする人が少しずつでも減っていくこと、これが、社会全体のレジリエンスが上がっているということを意味しているように思うんですよね。これは間違いないと。

―― 煽るツイートをリツイートしない人が増えていく、みたいな。

わたしたちのレジリエンスはどれほどのものか

:リツイートもそうですし、そういうツイートを読んでも心を動かされないということが大事ですよね。覚めた目で、「ふーん、だから何なの」というか、「一番大事なことはそこではないよね」という。

―― なるほど。「一番大事なことはそこではない」か、それもいいタイトルになりそうですね。

:情報がそろってない状態で、議論・論評すること自体が、多くはムダな行為という面もあるわけです。ただ、最悪に備えておくというのは、これは合理的行為なんですよね。自分たちのできることをこの機に見直しておこうとか、次の段階がこうだったら、こう動こうと想定をしておく、備える、これは重要なわけです。ただ、論じてもどうしようもないことを延々と論じてもどうしようもないわけです。言葉を定義せずに、言葉がカバーできないことを論じようとしたらヴィトゲンシュタインに怒られるわけですよ。

―― えっと。

(「語りえぬものについては、沈黙しなければならない」ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』)

:その考え方のアナロジーですよね、同じことですよ。データのないものを語ろうとしたって語り得ないものなんですから、それはもう道端で小学生なんかが口げんかしているようなのと大差ないわけです。

 そう考えたら、今回のオミクロンは、もちろん「備える」ことはした上で、わたしたちがどれくらい冷静に対応できるかで、この1年間でどれほどレジリエンスを高めたかを見極める機会になる、と言ってもいいんでしょうね。

 結局、冷静に、なにがわかっていて、なにがわかっていないか、を見極める。出てきた情報がどこまで外挿・演繹できるか、つまり一般的な話になるのかも考える。

 そういった情報へむかう態度をとっていただきながら、基本予防策の確認をして、最悪には備える、そういうマインドセットを整えておくことが、今は求められているんだろうと感じています。

―― はい。この本がすこしでもそのお役に立てることを祈っております。

日本は正しかったのか、そしてこの先どうすれば?
「新型コロナ」、そして「科学」を考える手がかりに

 新型コロナ、ワクチン、治療薬に関する現時点で確実に言えることをまとめ、さらに、新型コロナの感染→重症化のロジックの図解などを手がかりに、治療薬が効くロジックもみています。。後半は、まだまだ分からないことが多いウイルスや免疫の話題をベースに「『科学』は何をもって“正しい”と決めるのか」「専門家ではない人が最新の科学知識に向き合うには何が必要なのか」を、真正面から峰先生と話します。

 歯切れのいい解説と分かりやすさで、テレビやラジオでも引っ張りだこの峰先生ですが、その本当の持ち味は「人の好奇心を刺激してくれる」ところにあります。ポンポン返ってくる言葉に乗せられて、気がつけば最新科学のけっこうディープなところまで行ってしまう、かもしれません。詳しい内容はぜひリンクからご覧ください。(担当編集Y)

この記事はシリーズ「編集Yの「話が長くてすみません」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。