:えっ(笑)、変異がたくさん入った、じゃあ、これ、ワクチンは効くの? とか、感染しやすさが変わるの? とか、伝播性が変わるの? とかですか? たしかに、そういったことに興味は沸くんですけど、神様を持ち出すほどクリティカルかというと、そこまででもないような気がしますね。

 あえて神様に聞かなきゃいけないことがあるとしたら、我々には絶対に分からない過去のことですよね。どうしてこんな変異が蓄積したんだろう、とか……、ただ、それは推測ができるわけです、我々でも。いろいろな試験管内の実験をすることによって。

 例えば今回の変異の入り方って、まったく不規則というわけではないかもしれないんですよ。ヒトの免疫系による攻撃という「選択圧」から逃れるようにして、残ってきた変異の可能性もあるのですから、何らかの方向性がある場合もありえるわけです。そういう考察も、まぁ仮説ですけど、すでに専門家によって行われています。

 何が言いたいかというと、変異ウイルスの出現、これは「運」と言いましたし、現状そうとしか言いようがないんですが、でもきっと必然的な「何か」という要素はたくさん考えられるんですよ。抗体を含む免疫機構から逃れやすいとか、より伝播性が上がるとウイルスの生存に有利であるとか、選択圧から潜り抜けてきやすい素地があるとかね、そういうことを踏まえてたぶん変異として残ってきているので、その原理が知りたいといえば知りたいですけど、おそらく推測もできるし、手にある材料でしっかりやっていけばいい、そう思いますね。

―― 別に神様はいりませんか。

:というか、科学者は自分で解明するところを自分のなりわいとしているので、答えを教えてあげると言われても、あんまり興奮しない人が多いんじゃないかと。

―― なるほど(笑)。

:そこが自分たちの情熱を注いでいることですし、まぁ、仕事がなくなっちゃいますからね。もちろん、人によって興味の方向って違うので、いろいろな答えがあると思います。これはあくまで自分の考えですので。

日本、まるで「一人勝ち」。その理由は

―― なるほど。それにしても、一息ついたタイミングでの変異ウイルスの登場というのは、イヤですよねえ。

:あー、何て言ったらいいのかな、その通りなんですけど、日本と世界の状況は全然、違うんですよね……。現在、日本は一人勝ちに近い状態なので。台湾やニュージーランドもそうかもしれませんけれど。

―― おおっ。

:日本にいると「ああ、また出てきちゃったな」とか、「引き締め直しだ、まいったな」という感じがまずはするんだと思いますけれど、欧州、米国などは流行再拡大や流行が延々と継続している最中ですから、「泣きっ面に蜂」ですよ。踏んだり蹴ったりです。

―― そうなんだ。

:外国と日本の状況は全然違うわけですよね、そこは知っておいて損はないかなと思います。

―― この本の中でも欧米と比較して「日本はそこそこうまくやったんじゃない?」と検証していますが、今のところはそれで正しいんですね。

:はい、今のところ、日本はうまくやっているんですよ。そうでなけれ第5波はおさまらなかったでしょうしね。そして、第5波を抑えるために何か画期的な新しい対策とかが取られた、まぁ言い換えれば「神風が吹いた」わけでもないのにこの状況というのは……。

―― 先生、あまりそのあたりは触れずに、できれば本を買って読んでいただきたいんですが……まあいいか(笑)。

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