「飲み薬」のデメリットは「勝手にやめられる」こと

:だって確実に投与できるわけです。量もちゃんとコントロールできる。

――  飲み忘れもないですね。

:飲み忘れとか、「もうよくなったから」と途中でやめる人がいるわけですよね。コンプライアンスとかアドヒアランスの問題などと言います。まぁ医師からすれば適当な飲み方をするなんて「なんてことをしてくれるんだ」という。

―― ごめんなさいすみません。

:これは態度を怒っているのではなくて、飲み忘れで体内の薬が半端な濃度の状態になると、耐性を持つウイルスが出てきたりすることもあるんですよ。まあ、今回の薬の場合はメカニズムからしてあまり考えられないですけど、確実にお薬を飲んでもらうというのは実は大切な問題でして、その点について言えば注射でやったほうが医療的にはメリットがあるかもしれませんね。

―― はい、それはそうだと思うんですけれど……。

:いや、分かります。飲み薬の簡単さ、気分的な楽さ、安心感というのは確かにありますし大事なんです。ただ、これもなかなか難しいところで、気楽に飲めちゃうから「もうワクチン、いらない」とか、勘違いする人も出てきちゃうので。

―― なるほど。しかし現状ではそこまで勘違いできるほどの有効性でもないような。

:それはその通りで、ワクチンを打って予防するほうが断然効果的ですね。

治療薬があれば、ワクチンはいらなくなるか?

―― とはいえです。いずれ薬で治せる確率が上がってくれば、ワクチンを無理に打たなくてもいい、という状況になってくるのでしょうか。

:例え話をします。あなたが、放火魔がいっぱいいるような土地の行政担当者だったとします。連続放火がちょこちょこ起きる地域で、あなただったら何をしますか。

―― うーん、消防署に予算を割きますかね。いや、警察に人員を増やして、火を付ける前に放火魔を取り締まる手もあるか。

:そうそう。パトロールを強化、町内会では火の用心の見回りをして、防犯カメラを付ける。あるいは、家の周りの可燃物を排除する。まず火を付けられないようにする。これがマスクや3密回避といった基本的な予防策であり、具体的にはロックダウンなどの対策、そしてワクチンの接種がやっていることなんです。一方で、火を付けられた後に消すための話、消火器を用意しようとか、消防車を呼ぼうというのが、治療薬なんですよ。

―― それはどちらも必要ですよね?

:はい、必要です。どんなに警戒しても火を付けられてしまうことはありますから。しかし残念ながら、この場合の消火器や消防車、すなわち抗ウイルス薬の性能は、まだまだ完璧とは言えません。

―― 残念ながら。

:そして火が付いてしまった。家が燃え始めた。消防車を呼んで家に大量の水を掛けて鎮火した。そしたらその家はどうなりますか、という話ですよ。

―― 燃え残っても、放水で大ダメージを受けるといいますね。

:「火が消えたからよかったね」と単純に思うかもしれないですけど、もう住めるような状況じゃないこともありますよね、家財道具もだめになりますよ。

 これと一緒で、薬を使って早めに治ったからといって、体に絶対にダメージがないかといったら、あり得るわけです。元の状態に戻るとは限らないし、後遺症もあり得る。

 なので感染をした時点である意味では、「負け」なんですね。急性ウイルス感染症はすべてそうです。感染した瞬間に負けです。あとは、いかに症状を軽くするかを努力するだけなんです。ダメージは受ける。それを最小限にする、ダメージコントロールなんです。なので、予防に勝る治療なし、予防が一番です。感染しなければ勝ちなんですよ。だって感染しないわけですから。

―― それはそうですよね(笑)。感染しないって、ワクチン接種時の副反応は別として「何にも起こらない」ってことですから。

:そう、そして「流行をコントロールする」という意味においては治療薬には意味はありません。

―― あ、そうか。

:ワクチンは流行をコントロールしやすくするのは確実です。もちろん、治療薬が医療の逼迫を解消するという意味は大きい。なので、今後は、基本の予防策、そしてワクチンで予防をはかり、もしそこを突破されたら治療薬、という重ね技がより重要と考えておくのが妥当でしょうね。

―― ワクチンを代替するものじゃなくて、役割が違う。

:効果がある治療薬は“奇跡”のような貴重なものですし、今回、新型コロナにかなり効く治療薬が出てくる可能性があるのは、COVID-19を抑え込む上で大きな朗報です。ここは素直に喜んでよい。

 ですが、ワクチン接種のブレーキになってしまったのではその意味が相殺されかねません。そこは、しっかり理解していただければ、と思います。

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新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実』、皆様の高評価に支えられて、昨年12月の刊行ですが、今なお読まれ続けております。「確実に分かっていること」しか言わない峰先生の姿勢は、本コラムでもお分かりの通り。いらない不安に惑わされる前に、ぜひご一読ください。(タイトルの数字は2021年10月20日現在です)

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