―― なるほど、環境・燃費性能への影響に配慮しながら、これまでやったことがないやり方を採った。これが、最初から出せずに時間がかかった理由。

小野:先ほどのお話にちょっと付け加えますと、躍度を意識した設定を行ったのはアクセルを踏んだときの初期の反応だけじゃないんです。(加速の)初期はアクセルを踏む勢いで躍度をコントロールし、その後の、過給が効いて加速度が目標に向かって上昇する領域は踏む量に応じて、加速度の傾き、躍度の高さを変えています。だから多く踏めばより早く、ぐーっとこう、背中を押し付けられる力が継続して強くなっていくのを感じます。

―― 「いよいよターボが効いてきた、まだまだトルクがあるぞ」という、ディーゼルエンジンならではのフィードバックを「躍度」としてドライバーに返すわけですね。

小野:ここでも、いっぱいアクセルを踏んでいるから加速度を早く上げてやろうとすると、どうしてもO2ガードが介入してくる領域にすぐ突き当たってしまうんですよ。O2ガードに当たって燃料の噴射が抑えられると、加速度のカーブががたついてしまう。また、回転が上昇し過給が急激に上昇すると、躍度が高くなりすぎて、ドライバーや助手席の人が不安や不快さを感じるかもしれません。ここも注意しました。

 アクセルの踏み込みに対して、自分が想像していただけの加速感が出てくる。これが実現できていると、安心感、楽しく乗る、ストレスが低減、ということにつながる。

エンジンがよくなれば、コーナリングもよくなる

―― 躍度を重視することは、加速感の向上だけではなくて、急激すぎる制御を抑え、動きのつながりを重視する、不安につながる挙動を起こさない、ということでもある。急ハンドルや急ブレーキを避けよ、というのも「躍度をむやみに上げたら、ヘタな運転になるぞ」という言い換えができますね。

小野:その通りです。で、今回のアップグレードでも、躍度がとーんと立ったり、へこんだりしないようにしています。エンジン出力自体も上がっていますが、制御の改良で乗りやすく、楽しいクルマになったと思います。

―― そう、発進時にもたつかないことに加えて、コーナリング時にアクセルを踏んで安定させやすくなったことも、個人的にうれしい点です。

小野:そこは、エンジンのトルク制御がコーナリング性能に影響があるということから、例の虫谷(泰典・車両開発本部 操安性能開発部 第2車両運動機能開発グループ兼総合制御システム開発本部 上席エンジニア)の強い思いが、アドバイスが入っております。

―― 「欲しいときにトルクが出る」と信じられると、運転が楽しくなる。エンジンのレスポンスとハンドリングには密接なつながりがある、ということが、アップグレード後に個人的にはすごくよく分かりました。エンジンの反応がよくなったアップグレード後は、アクセルペダルでクルマの姿勢を操れる、という実感があります。

小野:「G-ベクタリング コントロール(GVC)」のときからパワートレイン(開発本部)と操安(性能開発本部)はタッグを組んで、一緒にクルマの動きをつくる活動をやっています。私たちがいるのは宇品地区のシャシー実研棟という、今お話ししている本社地区から5キロぐらいのところなんですけど、そこにはクルマの加速とハンドリングとブレーキを担当するメンバーが1つのフロアに集まっています。

―― マツダの動的性能の聖地みたいな感じで。

小野:そういうフロアに集まっているので、お互い話がしやすいんですね。もちろん、ちょっと仲が悪いときもあるんですけど(笑)。エンジンだけ、足回りだけではなくて、操安性能を一緒につくろうという体制になっています。

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