小野:(しもた、という顔で)理屈より体感で理解していただいたほうが早いかもしれませんね。先ほどお話ししたように、アクセルペダルを踏むことで、エンジンは燃料と空気を消費してトルクを生み出し、クルマは加速します。

―― はい。

小野:そこで、ペダルの操作には2つあると思いませんか?

素早く踏み込むか、じんわり踏むか

―― 踏み込む量と……速さというか、勢いかな。踏み込む量は同じでも、そこまでぐいっと踏むか、ゆっくり踏むか、がありますよね。

小野:そうそう。ざっくり言うと

●アクセルを踏み込む量=加速度の大きさに影響する
●アクセルを踏み込む勢い=加速度がどのように変化するかに影響する

 この2つをドライバーが “アクセルの踏み方” で調整しているわけです。

―― これまでは踏み込む量に比例した加速度を出す、ということを重視していた。アップグレード後は、踏み込む勢いに合わせた躍度を出すことを意識するようになった、という理解でいいんでしょうか。確かに「踏めば出るようになった」という、自分の実感には合っていますが。

小野:大丈夫です。ただし、躍度を重視するということは、出足がよくなった、というだけではなくて、じわっと踏んだらじわっと出て行く、ということでもあります。要は、ドライバーの踏み加減に合わせて、グッと出たり、ゆったり出たり、クルマが動くようにする。

―― なるほど、足を乗せただけでびゅっと出てしまうのでは、加速した感じはすごくてもリニアじゃない。バブル期はそういうクルマもたくさんありましたが。

小野:今までの話をグラフに直すとこんな感じです。(編集Y注:こちら小野さん直筆ならぬ直エクセルです。ぜひ、拡大してご覧ください!)

(出所:マツダ)
(出所:マツダ)
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―― ああ、なるほど。躍度が「加速度の変化」だということが分かってきました。躍度がゼロでも、速度が上昇していくこともあるわけだ。

加速度のグラフの傾きが「躍度」

小野:そうそう。一定の加速が続く(加速度のグラフが傾きのない直線を描く)と、速度はどんどん増しているのですが、躍度は「ゼロ」になります。

―― 加速はしていても躍度はゼロ。加速・減速が生じて、加速度のグラフが立ち上がったり下がったりすると、躍度が発生する。

小野:そして、人間が「加速しているな」と感じやすいのは、加速度よりも躍度のほうなんです。加速度が一定の加速を続けている状態では、体にかかる力に変化がないので、人は「今、加速中だ」とは感じにくい。加速度のグラフが平らなときですね。

―― 加速中だと感じやすいのは、加速度のグラフが斜めになっているときなんですね。加速度自体が変わっているんだから、つまり、クルマだったら、シートに体が押し付けられていく、その押してくる力がぐぐーっと増してくると「すごく加速しているな」と感じる。

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