―― でもうちで連載していただいている池田直渡さんに話を聞いたら、「いや、排気量が小さくなるとエンジンの開発はぐっと難しくなる。そこまで期待したらマツダがかわいそうでしょう」と言われたんです(「自分のクルマを50万円ほど高く感じる方法(個人の印象です)」)。

小野:池田さんもよく存じております(笑)。内心「1.8Dにもツインターボがあれば」という思いはありますし、理想を狙うなら、と、提案しなかったわけでもないんですが、やはり、価格が高くなってしまう。そこは記事で池田さんが言ってくださったとおりで、十分な性能を持ちつつ、リーズナブルなエンジンにしたいということで、こうなっています。

 池田さんには今回の1.8Dエンジンには結構、助言などをいただいていますので。それも「MAZDA SPIRIT UPGRADE D1.1」には生かされています(マツダの公式ページは→https://www.mazda.co.jp/carlife/spirit-upgrade/d11/)。

―― 今回、取材をお願いしたのは、CX-30の1.8D搭載車(改良が入る2020年10月以前に購入)が、発進時や、減速してからの再加速時にどうももたつくクセがあったのが、ソフトウエアのアップデート、マツダの言葉では「アップグレード」ですか、これを行ったことで、さっきおっしゃった「アクセルペダルとクルマの動きのリニアな連動」にかなり近づいたからです。ほかにも様々な改良点がありますが、自分にはここの改善が一番大きかった。

小野:はい。

―― ソフトの制御をどう変えるとこういうことができるのか。そして、これが一番お聞きしたいのですが、これができるのだったらどうして最初のモデルからやらなかったのか。先に確認しておきますが、エンジンに求めるものが途中から変わった、ということではないんですよね。

小野:はい、そうです。理想は変わらず、そこに到達するためのもっといい手段が見つかったので、それを適用させていただいた、ということです。

「躍度」って初めて聞きました

―― なるほど。それでは、何を変えたことでアクセルの操作への反応がリニアになったのかを、お聞かせください。

小野:最も大きいのは、加速する際に重視するポイントを、「加速度」から「躍度(やくど)」に変えたことだと思います。当初は“加速度の大きさ”で踏み込み初期の応答感や反応のよさを感じていただこうと思っていたのですが、アップグレードでは“加速度の時間的な変化のしかた”で感じてもらう、というふうに考え方を変えました。この時間的な変化のことを「躍度」と言います。加速度と同じで物理用語の一つです。ここはかなり大きなポイントです。

―― 躍度……というのは。

小野:加速度は「速度が時間的にどのような変化をするのか」を示した値ですよね。加速度が大きいほど速度が速く上昇することになります。これは皆さんご存じだと思います。

 その加速度が時間的にどのように変化しているのかを表すものが躍度になります。時間的な変化ですから。数式で表現すると刻々と変化する加速度を時間で微分したものになります。「加加速度(かかそくど)」とも言います。

―― え? 微分? カカソクド?(数学アレルギーが急角度で立ち上がる)

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