小野:本当に理想を言えというなら、自分が「こんな加速をしたい」と思ってアクセルを踏む。そのアクセルに1対1で加速が追従してくれるようなものです。私が好きな、というか、理想と思っているのは、ちょっと古いクルマになるんですけど、昔、ヨーロッパに駐在していまして、そのときに乗せてもらった2001年モデルのBMW M3とか、ポルシェの911カレラとか、そこら辺ですね。共に3リッター以上の大排気量エンジンで、アクセルに対してダイレクトなトルクを出していた。だからアクセルの操作に対して加速感がぴたりと追従してくる。本当に1000回転(毎分、以下同)ぐらいの低い回転からでも、踏んだら踏んだだけトルクが出てくる。あれですね。

―― なるほど、それは90分ポルシェに乗っただけの自分にもよく分かる気がします。

小野:あ、PEC東京(ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京)に行って来られたそうで。

ポルシェを例に出されると、どう答えようかと(笑)

―― はい、718ケイマンTに(以下、素人試乗のよもやま話は省略)……ペダルを踏む足の動きとクルマの加速がぴったり合う感じですよね。加速感の専門家の方が、自分と似たようなところを感じてくださっているのかなと、勝手にすごくうれしいです。

小野:即、足に付いてくる感覚、ありますよね。ただ、なかなか制約がある中では難しいところなんですね。といいますか……ポルシェを出されると、ちょっとどう答えようか、今後どう話していこうか、困りました(笑)。

―― いやいや、マツダにポルシェになれと言っているわけではないんです。そもそもお値段が違いすぎますし。でも「ああいう加速感が好きです」とおっしゃっていただくだけでも十二分に、おそらく小野さんのお話を読む人もうれしいと思います。

小野:所与の条件が違いすぎますから、あの加速感をそのままというのは物理的に無理でしょうね。とはいえ、ポルシェが優れているのは、アクセル操作に対して追従性がいいとか、「こう走りたい」というドライバーの気持ちをしっかり実現してくれるエンジンでありクルマであるところ、ですよね。マツダも目指しているのはやっぱりそこです。

―― それに、クローズドなサーキットならいざ知らず、普段使いなら2.2D(SKYACTIV-D2.2、マツダの排気量2.2リッターのディーゼルエンジン)を積んだCX-5、あれで全然文句ないなと。

小野:もう十分すぎると思います。日本の道路環境だとあれを思い切り使い切れる場所というのは……あるんですかね? 今、私、プライベートでまさにその2.2Dに乗っているんですけど、やっぱり全開にすることはないですね。普段は能力の4分の1くらいしか使っていないと思います。そもそもあちらはツインターボなので、アイドリング状態でも小さいほうのタービンがしっかり回っていて、すぐ過給しちゃいますから、エンジンに空気がガンと押し込まれて。

―― ターボで空気が押し込まれれば、燃やせる燃料も増えるから。

小野:そう、出足からトルクがどんと出て。

―― いい展開なので突っ込ませていただくと、その2.2Dを知っていたので、CX-30の1.8D(SKYACTIV-D1.8、排気量1.8リッターのディーゼルエンジン)を買おうと決めたんです。1.8Dは2.2Dのスモール版だと思って。「排気量が約2割減なら、むしろちょっとおとなしくなって、ちょうどいいんじゃないかな」くらいに。

小野:そう期待されますよね。存じております。多くの方に言われています。

SKYACTIV-D1.8(写真:マツダ)
SKYACTIV-D1.8(写真:マツダ)

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