:政府もメディアもそうなっています。その副作用として、「コロナはただの風邪」から「治療薬があれば大丈夫」まで、現実逃避の耳当たりのいい話が活性化しています。風邪扱いも、治療薬への過剰な期待も、どれもしんどい現状を否認してひとときの安心を得るための「神風」願望だと思いますね。

―― 我々人間の習い性ですね。目の前の苦境を「それは全部ウソなんだよ」「すぐに神風が吹いてなかったことになるんだよ」と言われたら、飛びつきたくなりますもん。

現実にできることは、「湯加減」の調整

:でも現実にできることは、本で言った「湯加減」の話なんですよ。新型コロナの対策は、いま生きている人が誰も経験したことがないのですから、トライ&エラー、きつい対策、ゆるい対策をうにゃうにゃ試しながら、みんなでいい具合のところを見つけていくしかないんですね。

―― 現状は、水をどばっと入れすぎてぬるくなっちゃって、このままだと風邪を引きそう、でも、お風呂の再点火スイッチが見つからない。そんな感じでしょうか。

:これまた前にも申し上げましたが、だからこそ、法整備を進めて「再点火」を行う準備を整えておくことが必要であったかもしれません。今からでも手を打つべきでしょうが、すぐどうにかなるものでもない。まぁ、得たものがあるとするなら「ここまで水を入れてはダメなんだ」という経験値、ということですね。

―― うーん。

:基礎的な知識を理解して、客観的に現状を見る、という基本に戻り、いまどういう状況なのか、ぬるま湯か、それとも熱い湯であるかということを判断する。流行を抑えるという目標に向かったときに、今の進行度はどのぐらいで、抑えないとどういう段階までいきそうか、抑えられたら次はどんな手を、と、そういう話をすべきなんです。

―― 実は、それが一番個人にとっても精神的に実は楽……じゃないかもしれないですけれど、平穏なはずなんですよね。人にあおられてばーん、また人にあおられてばーん、というのはとにかく辛い。

:そうです、そう思います。しっかりした土台に立った判断軸がないまま過度な情報にさらされると、精神的に不安定になり、すぐに反応(リツイートしたり)する、のるかそるかの判断を下したくなる、みたいな状態に陥ります。そこから逃れるというのはすごく重要だと思うんですよね。

第5波はなさけない形で収束する?

―― そんなお考えを伺ったあとで大変恐縮なんですが、第5波はどうなると見ていますか。

:これはあくまで現時点での個人的な意見ですが、私は第5波は秋のうちには収束してくれるのではないかとは思っています。

―― 思わず飛びつきたくなりますが、それは、どの辺に最大の根拠がおありなんでしょうか。

:これは、収束するとはいっても「いささかみじめな状態で収束するんじゃないか」という話です。第5波は、ワクチンの接種率向上による面やもちろん接触抑制による面もあるとは思いますが、まずはブルネラブル(vulnerable)……感受性が高いとか、脆弱なとかいう意味もあるんですけど、同時に社会学的な行動状態もあって、「よりリスクを取っている人」が、感染し尽くすという可能性があると思うからです。

―― うわあ。感染しやすい生活習慣を取っている人が感染し尽くして止まる、というようなイメージですか。

:そうそう、それで収束する可能性はあると思いますね。ただこれは「理屈としてはそうなる可能性があるだろう」という予測です。そもそも、今もうワクチンを打っている人、そして打ちたいと希望している人は、予防行動もしっかり取る人が多くて、「ワクチンなんか関心ないよ」とか「打たないよ」という人は、「マスクぐらいはしてもいいけど、みんなもう飲みに行っているし、自分も遊んでもいいだろう」ぐらいの感じの人が多いと思うんですね。

―― そういう人が、感染リスクが上昇している中に出て行く。感染者も増えますね。

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