:一言で言ったら、飲食店とか一般店舗は営業禁止ですよ。

―― 禁止ですか。

:というか、去年(2020年)の6月の時点で私が住んでいるここ(米国ワシントンD.C.近郊)に出ていたのはステイ・ホーム・オーダーです。つまり家の外に出たら罰金とか、(不服従行動が)ひどければ逮捕です。

―― 逮捕ですか。

:逮捕です。

―― そうか。うーむ。感染抑制のためには期間はどのくらい必要でしょうか。

:ロックダウンですか、ここでは段階的緩和はありましたが結局なんだかんだで半年間ぐらいやりました。

―― 半年間? うわあ、改めて聞くとそれはすごい。

:ただし、前もちょっと話しましたけれど全員がおとなしく守っていたわけではないですし、もちろんみんなブーブー言ってもいた。

―― ホームパーティをやっていた人もいた、とうかがいました。でもそれは無理ないし、ブーブーも言いたくなりますわねえ……。

:日本では、早い時点から3密回避を打ち出したこと、それを一生懸命まじめに守っていた人が多かったこともあり、ストレスが大きく、実際に経済的な影響も甚大なロックダウンをしなくても、いろいろな問題はあれど、英米のような死者数を出さずにすんだわけです(参照:「GW明けに状況急変? ワクチン接種の『知らないと不都合な真実』」)。

―― そう考えると本当にやばいじゃないですか、今の日本の状況は。

:やばいんですよ。だからある意味、欧米化しているんですよ、日本の状況が。今になって。

―― デルタがはやっている中で欧米化しつつあるのか。

:2020年前半にはまだワクチンはなかったので、当時に比べれば大きな優位点もあります。接触を断つのが難しいなら、「自分の状態」を大きく変えればいいわけで、つまり、新型コロナウイルスへの免疫ができればよい。すなわちワクチンを打つということですね。

 ワクチンの接種率が上がっていけば流行も起こりにくくなる。ただトランジェント(過渡的)な状態としては、接触抑制もワクチン接種も一生懸命やっているんだけれど、やはり気持ちの緩みや、ワクチンが希望者全員に行き渡らず、流行が止められないという状態ではあるわけです。

マクロでなくミクロばかりが注意を引いている

―― 感染を止めるには人と人の接触をがつんと抑えたい。でも、経済的、心理的な影響が甚大なことも分かってきた。

:はい。複雑な社会的事象をあえて無視して、医療的な観点のみを考えていえば、先ほど申し上げたように強力な接触抑制は感染を止める効果が絶大ですから、それを主張したくはなります。しかし実際には、社会生活や経済的なことも含めて、どの程度の強度で接触抑制策を実行するかを考えねばなりません。

 そしてその抑制の強度は当然、流行の度合いによって変わるべきですよね。

―― ん、あれ? つまり……。

:そう。目標は「流行を止めること」なんですから、ロックダウン、自粛、飲食店、ワクチン、それぞれの可否じゃなくて、総体としての流行の状況と、それに対する我々の活動度のバランスなんですよね。ワクチンの接種の進展状況ももちろん変数に入ります。

 活動度をがんと下げて、接触頻度がどーんと落ちれば、流行はちょっと遅れますけど必ずがくんと下がるわけです。もしそういう覚悟を集団として持てれば、より早い収束が望めるでしょう。でも、もう気持ちや意識が緩んで我慢が利かなくなっている人が増えているし、仕事が立ち行かなくなっている方も出ていたりもするので、そういうことを考えると、「どんと落とす」のは無理でも、「ちょっとでも早く戻す」ためにどうすればいいかという議論をするのがよい、ということになるでしょうね。

―― つまり、最終的には流行を収束させるのが目標、打てる手はこれこれ、効果と副作用はこれこれ、流行状況がどの段階にあったらどこまでを発動、と。これ、国がやっていることも基本的に同じはずなんですが、なんかこう、あまり「効いている」気がしないし、ちゃんとやってるな、という頼もしさを感じない……。ワクチン接種とかも、どうもネガティブな方向で報じられることが多いですよね。

:ワクチンはさておき、自粛関連の対策、特に政府のやっていることに関しては、何度も繰り返すと効果が落ちるのはどの国でも同じです。ましてや日本では一番強い「緊急事態宣言」でも、ほぼお願いベースの項目がたくさんありますよね。慣れてしまうこともあります。

:そして、いま議論が多く起こって混乱している原因は、「個別の対策を打ち出すことそのものに意識が行き過ぎている」。これが大きいと思います。

―― マクロではなくて、ミクロから考えるのが癖になっているってことですか。

次ページ 現実にできることは、「湯加減」の調整