:仮にYさんが河野太郎大臣なら、ワクチン接種率の向上を自分の仕事の第一目標にするのは正しいと思いますが、今申し上げたように、ワクチンさえ打てば他は何もしなくてもいい、と考えると、米英イスラエルのようなことになるわけです。

 新型コロナウイルスとの戦いの目標は、「流行を抑えること」です。ワクチン接種率の向上はそのための手段であり通過点に過ぎません。別の言い方をすれば、もしワクチン接種率の向上が難しいなら、他の予防対策をプラスすることで補ってもいいわけです。

―― えーと。

:「流行を抑える」という目標があって、そのために打てる手は何があって、その手を実施する際に議論になるのはどこか、そこを整理しなきゃいけないのに、「こんな問題がある」と発見することのほうに全力を注いでいるように思えます。

 もちろん、問題点の発見も大事なんですよ。でも、「流行を抑える」「2019年以前の日常を可能な限り取り戻す」という目標に向かって、できることを還元主義的に、要素に分解して理解していくという丁寧なステップが今、一番必要な気がします。

―― 具体的にはどういうことになりますか?

感染症の成立要素は3つだけ

:要は、もっともっと原理に戻りたいんですよ。感染症というのは流行が成立するための条件が3つしかないんです。「病原体」と「感染してしまう主体」と「感染ルート」。

―― あ、それはそうだ。

:そうなんですよ、このレベルから考えたい。

―― ではその3つを断つにはどうするか。

:まず、病原体をなかったことにするというのは、全世界に広がった状況ではもう無理です。「主体」、つまり感染する可能性があるヒトの状態を変えるというのが、ずばりワクチンなわけです。これは有効。

―― なるほど。

:もう1つは感染ルートを断つということですね。どんな感染症でも、対策はここから始めますし、この重要性は今も全く変わっていない。

 ここから組み立てると、結局流行を抑えたいなら、自分の、人々の状態をワクチンで変えるか、感染ルートを断つしかないわけですよ。感染ルートを断つということを徹底できれば、流行は収まっていくわけです。これはもう間違いない。

―― 新型コロナウイルスはヒトの中でしか増えられないんだから、どう変異しようが、たとえ伝播性(うつりやすさ)が強くなろうが、病毒性が増そうが。

:はい、そもそも感染者との「接触」を絶てば、新型コロナに限らずどんなウイルスもうつってくることはできず、増えることもできません。

できるならロックダウンすべきか?

―― それはつまり、ロックダウンをせよという話でしょうか。米国にいる峰先生から見ると、今、東京は厳格な外出規制が必要なように見えていますか?

:経済状況への忖度(そんたく)なしに、医療関係者としての視点のみで言わせていただけるなら、ロックダウンすべき段階まできているのは事実だと思います(8月30日時点)。

―― そこまできていますか。でも日本では私権を制限する法的な根拠がない。

:ならば、例えば公共交通機関を止めてしまうのもひとつの手かもしれません。会社での会議、飲み会や食事での接触で感染して、家に持ち帰って家庭内感染を起こす、というパターンでの拡大が続いていますから。止めるのが難しければ、プライシングという手法はありえますよね。初乗り1万円にしちゃうとか。

―― これ、先日行ってみたある歓楽街なんですけれど、「お酒を出しています」という看板が目立つし、そういう店はお客さんも大入り満員でした。マスクをしている人もほとんどいません。これを見たら「あれ、もう外食も飲み会もオーケー、マスクしなくてもいいのかな」と思っちゃっても無理ないですよね。

※8月21日に撮影
※8月21日に撮影

:これは責める意図ではなく、客観的に見ての話ですが、自粛への気持ちがもう完全に緩みきっちゃっているので、このままでは抑えようがなさそうですね。

―― 私はロックダウンを経験したことがないので分からないんですけど、ロックダウンをもしやったら、どういうことになるんでしょう。

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