―― 嫌われることも重要な情報なんですね。あ、そういえばよそ様のインタビューで、「欠点を考えるとキャラが動きだす」、それと「キャラに別に愛着はない」ということをおっしゃっていて、これはどちらもすごく面白いお話なんですけど、私も聞いてみたいんですが、いいでしょうか。
泰:もちろんです。
―― まず「欠点から考えるとキャラクターが動きだすんです」というのは。
欠点があるほうが、人は話を聞いてくれる
泰:欠点のほうが面白いというか、人間味が出ますから。警察の仕事で講話をするときにすごく言われたことなんですけど、例えば「交通安全の話」をするためには、本題は10%しかしゃべってはダメ、あとの90%は面白かったり残念だったりする笑い話をしないといけない、と。
―― 分かる。すごく分かる。私、「お前は話も原稿もいつも無駄に長い」と言われるんですけど、でもそういうこともあるからなんですよねえ(泣)。
泰:そういうところでちょっと聞き手に気を抜いてもらったほうが、自分が伝えたいこの1割を伝えやすいなと。だから欠点や残念なところ、そういう9割を考えるのに一生懸命工夫しますね。
―― ハコヅメ屈指のイケメン、如月君は「AV7段」でしたっけ。
泰:8段です。
―― 8段ですか。あれ、傑作です。ものすごく親近感が湧きました。
泰:ありがとうございます。よかったです。頑張って考えました。
タブチ:名ぜりふも言っていましたもんね。「(AVは)大人が楽しむファンタジーであって、子供にリアルを教えるものじゃない」と。
泰:そのセリフには良いほうの反響がありましたね。
―― さすが8段です。もう1つのほうはいかがですか。キャラクターへの愛情というのは。
泰:ないですね(笑)。
―― さらっと言い切りましたね。
泰:1つのキャラに愛情をかけ過ぎると物語の公平性が崩れてしまってバランスが悪くなると思うので。そうしたら、たぶん読んでいる方は面白くないと思うんですよね。独りよがりな話になって。だから、それぞれのキャラクターのプラスマイナスがゼロになるような計算でキャラを動かしたいという。
―― ああ、言われればそんな気がする。
泰:いいことがあると悪いことを付け加えてという。
―― 言われてみれば、いいセリフを吐くと、直後に何かつまらないことをやっちゃう、みたいな流れがありますね。
泰:そうですね。
タブチ:聞いていて思うんですけど、そこまでキャラのことを考えているのを普通は「愛」と言うんですよ(笑)。
泰:え、でも……。
タブチ:普通の人は、作家さんであっても四六時中、そんなにキャラのことは考えてないと思います。
泰:そうなんですか。
タブチ:はい。そこまでではないと思います。
どっちにいるのか分からない
泰:私、最近道に迷うようになっちゃって、家の近所で。
―― いきなり何の話になったんですか、そもそも、道って後から迷うようになるものなんですか。
泰:何か分からなくなるんですよね。リアルな世界と(『ハコヅメ』の舞台の)岡島県とが、境目がつかなくなってしまうので。
―― あらあ、岡島県から帰れなくなっているんですね。
泰:そうです。家の近所で道に迷うので、車には乗らないようにしているんですけど。
―― まずいですね。
泰:まずいですよね。社会復帰できるか分からない。
―― 帰ってきてください。
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