―― ユーザー目線で思わず横道に突っ込んでしまいましたが、「自分はいいものをしっかり選んで、買って、使って、満足できている」という体験は、クルマなどの高額な消費財ならではのものですし、支払う金額が大きい分、その満足感が人生観にも影響する(こともある)んじゃないかと思います。
石橋:そうですね。その満足感をご購入後も支えていく方法の1つとして、アップデートがあると。
「運転」の喜びの伝え方
―― マツダの話から外れちゃいますが、この春、息子が就職というか、小学校の先生になりましたので、父親からのお祝いとして、お小遣いをはたいてポルシェ・エクスペリエンスセンター東京(PEC東京、千葉県木更津市)に連れて行ったんですよ。
石橋:あっ、すごいですね。
―― 専用のコースで90分間、隣にインストラクターが付いて、ポルシェでスポーツドライビングを教えてくれるという。もちろん息子だけでなく、自分も体験してきたわけですが。
石橋:それは楽しかったでしょう。
―― はい、とっても。で、例えば、マツダのクルマに乗ると、三次(広島県三次市)のテストコースで運転を教えてもらえる、みたいなことをやってくれたらいいのにと思いました(笑)。
石橋:そういうのは、個人的にはすごくやりたいですね。
―― というのは、マツダの試乗会とか、取材で担当の方に「他社のクルマだと何が一番好きですか、理想はどれですか」と尋ねますと、ほぼ100%ポルシェを挙げられるんですよね。
石橋:ですね。分かります。
―― PEC東京は90分足らずの体験でしたが、「確かにこれは目指すに足るクルマだ」と思い知りましたし、こういうクルマを理想の1つとして持っている人々が造るクルマならば、乗っているクルマへの満足感、肯定感を育てるには、何よりも「運転」という切り口が有効なんじゃないかと。あなたのクルマはこんな走りができるんですよ、と体験してもらう。
石橋:ご存じかもしれませんが、弊社もドライビング・アカデミーがあって、お客様のクルマを使ってドライビングレッスンをするイベントはあるんですよ。ポルシェのような体験センターみたいな形で体系立ててはできてないんですけれども、ああいうことをやりたい思いは持っているんです。実は主査たちで、実際にPEC東京に行こうという企画もありまして。
―― ああ、それはもうぜひ行っていただきたい。マツダの言う「Be a driver.」「Zoom-Zoom」、それってきっとこういうことだよな、という体験がもう嫌というほどできました。何も考えずに時速80キロで走るよりも、ちゃんと考えてクルマのコントロールを意識しながら120キロで走るほうが、安心感がある。そして、「自分の思い通りにクルマが動いている!」というのは、すごい爽快感です。スキーの滑降と似てますね。「クルマってこうやって運転するんだ」「クルマはこんなことができるんだ」という、得がたい体験でした。ああいう体験ができると、なかなかその経験をさせてくれたメーカーから離れられなくなると思います。
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