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CX-30(欧州仕様、写真:マツダ)
CX-30(欧州仕様、写真:マツダ)

―― ところで、石橋さんは佐賀尚人さんからCX-30の主査を引き継がれたわけですよね。主査は雑誌の編集長と似ている、というお話を佐賀さんとさせていただいたんですけれど(「我が娘はクルマに興味ゼロ、なのに感じた『クルマの味』」)、新型車の主査に似た立場として、創刊誌の編集長というのがあるんじゃないかと。あれはやっぱり格別なものがあって、逆にヒットした雑誌を引き継いだ2代目編集長方はだいたい苦労されるんですよね。

マツダCX-30主査 石橋 剛さん(以下、石橋):なるほど。

―― 無理やり前と変えて自分の色を出そうとして総スカンを食らっちゃったり、あるいは逆に何も変えなくて、この人何のためにいるの? と思われたりとか。石橋さんはいかがでしょうか。主査をやらせるなら、最初からやらせろよ、みたいなことを思ったりしないものですかね。

石橋:そうですね、もちろん、「やらせてもらえるんだったらゼロから」という思いがまったくないのかというと、それはない。

―― ですよねえ。

石橋:じゃあ途中から引き継いで主査をやれと言われたことに対して、「えーっ」という気持ちはないかといわれたら、それもほとんどないです。

 何でかというと、このCX-30というクルマはマツダとして出した商品だからです。CX-30を通してお客様に約束したことは、主査が誰になろうが変えるべきではないと私は思っています。ここを守りつつも、じゃあ佐賀ではなくて石橋に主査を任せたというのはどういう意味があるのかを考えると、私が持っている、お客様と品質・検査を通して接してきたバックボーンを生かして、佐賀じゃできないところで、CX-30の魅力をさらに深め、お客様とのつながりを私の目線でアップグレードしましょう、ということかなと。そういう思いでやっていますので。

―― では、CX-30は、購入したお客さんとどんな約束をしているとお考えでしょうか。

人生の転換期を支えたい

石橋:それはいつも考えていますので、ちょっと言葉が整いすぎているかもしれませんが「人生の転換期を、マツダ独自の視点とソリューションで支え続ける」というものです。

―― 噛み砕いてみたいのですが、「転換期」とおっしゃいましたね。

石橋:はい。

―― ここでの転換期とは、具体的にはどういう時期なのでしょうか。

石橋:例えば、ご結婚されたご夫婦の方が子どもができた。そのタイミングでクルマを考える。あるいは子育てを一段落終えた方が2人にまたなったときに、じゃあ、クルマはどうしようか、とか、ライフステージの変化は購入する契機になることが多いと思うんですよね。それを「人生の転換期」と言わせてもらっているんですけれども。そこに対して、このCX-30は、マツダ独自の美しさにこだわり、お役に立つ装備・機能でもって支え続ける。そこをお客様との約束と捉えているということです。

―― 今、石橋さんのお話から勝手に感じたんですけれど、おっしゃったような、人生が進めば確実に起きる転機もあれば、結婚とか転職とか、自分の決断で起こす転機もありますよね。転換期を支える、というのは、「変わろう」「変えたい」という気持ち、それを下支えしてくれるというか、後押ししてくれるようなことも、含まれるのではないですか。

石橋:もちろんその通りです。先ほど(「『80%でやれ』だと、フラストレーションが溜まります」)事例として紹介させていただいた、北米の独身女性の方にCX-30が人気があるというお話も、購入の理由としては、「このクルマを持つことによって、もっと自分のステータスが変わる、変われそうな気がする、だからCX-30を選んだ」というものが多いんです。「自らが変わったことへの承認、変わることへの後押し」というところも含めて、転換期を支える、ということだと思います。

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