石橋:マツダの商品改良の考え方ということですね。まず、お客様のご要望そのものが、特にこの2~3年で大きく変わってきているし、多様化してきています。一方でクルマの技術、一般的なデジタルの技術もどんどん上がってきています。個人的に思うのは、2~3年前の常識というのは今の非常識だと。

 そこまで違いますか。

石橋:例えば、そもそもクルマをアップデートできるというのは、日本では3年前には考えられなかった。今はもう法令も整備されましたし、当たり前にできる。当たり前にできるようにクルマ側の技術も上がったんですね。お客様も我々自身もどんどん進化している。一方で、19年にCX-30を出しましたけれども、19年に出すということは、16年、17年ぐらいにいろいろ考えて、ああしよう、こうしようと決めているわけです。今は22年ですけれども、すでに19年時点での常識が通用しなくなっている。

 まして開発当初とは、と。

「バッテリー、Wi-Fi、アップデート」が欠かせない

石橋:我々はこだわりを持ってクルマを造っておりますし、そこが評価されているという手応えも、お話しした通りもちろんあるんです。けれども、変化が早く、大きい時代に、お客様の声を敏感に感じ取らせていただいて、できるところはいち早くお客様に提供する。そのためにはすでにお手元にあるクルマにアップデートを行うことも必要になる。

 すみません、こんな言い方で伝わるでしょうか。個人的に事例としていつも話をしているのが、いわゆるこれですよ。

 ん? スマホですか。

石橋:そうです。誰もが持っているスマホには、OSのアップデートが勝手に飛んでくるじゃないですか。

 ああ、普通にやっていますよね。

石橋:それに対してユーザーの我々は何の抵抗感も、何の思いもない。

 面倒くさいなとは思いますけどね。当たり前のことになっている。

石橋:当たり前、そうです。今の価値観は、バッテリー、Wi-Fi、アップデートなんですよ。この3つができて当たり前。とにかく電源があること、ネットにつながっていること、そして、OSやアプリが最新版になっていること。でないと不安になってしまう。

 安心して使うには、アップデートが当然だってことですか。

石橋:クルマもどんどん、スマホ化する……とは私は言いませんけれども、制御の塊になっていくのであれば、当然ながら企業としてそういったアップデートを行って、最新・最善の状態で使っていただきたい、ということですね。今は有償ですし、OTA(オーバー・ジ・エア、無線によるアップデート)ができてないのでスマホのようにはいきませんが、最新版を当たり前に提供させていただくというのは、我々の責任だと思っています。

 ちょっとそもそもの話なんですが、クルマがアップデートできるようになったのは、ソフトウエアでできることが増えたためですよね。これって、つまりは、ハードウエア側が、ソフトが出してくる細かい制御に対応できるようになった、ということなんでしょうか。

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