:ああ、そうなのかもしれない、そうですね。私、本当、変態なので、4~5年先のところから見たやつとかをやって、伏線を分からないようにしのばせて、リスクヘッジじゃないですけど、何か描くものがなくなったときにそれを出すというふうにしようという心づもりはあったんです、リスク回避で。

―― 最初はギャグ路線でやっていたけれど。

:はい。伏線はタブチさんの「今出していいよ!」というタイミングで出すかたちになりました。

―― それが4巻目だったと。

:正直なお話をすると、メディアミックスとかを考え始めた、なんというか色気が出てきたのも4巻くらいからです。お金のことを考えるようになった(笑)。

―― またそんな(笑)。ともあれ、「ここが勝負時だ」と、作家さんも編集者も考えたんですね。

:「新しいキャラ出して」とか、「長編、やっていいよ」も、タブチさんが勝手にTwitterに流したこともありましたね。

―― えっ(笑)。

担当編集が長編へと背中を押す

タブチ:勝手に流しましたっけ。

:(藤の)4人目の同期が、顔が出ないで名前だけ登場する話が4巻であるんですけど。

―― あっ(単行本を開く)それはこれですよね。4巻の「女子会」の回で出てくる、ここの。

:ああ、そうです。

―― これ、伏線を探しながら読んで見つけたとき、結構ぞくっとして、「うわ、この時点でもうこのキャラが暗示されとる」とびっくりしたんですよ。

:それまでは、ちょっと長編は怖いから描かなくてもいいかなと思って、しばらく6巻、7巻ぐらいまでばーっといっていた中で、タブチさんが「この4人目の同期生、何なのか気になるな」というツイートに対して、リツイートで「ふふふ」って3文字だけ返したんです。これは「出せ」って指示が来たと思って、その次のネーム日にその4人目の話をばって出したら、「やっぱり来ましたね」と返事が来て(笑)。

―― タブチさんもさすがですね。

:描かせてやったぞ、描かせたったみたいな感じで。

タブチ:そうでしたっけ。

―― してやったりな顔です。

:私の中ではいつか描こうと思っているキャラクターだけど、まだ描く力量がないから眠らせておいて、そのまま設定として埋めておこうかなと思っていたところで、今だ行け!みたいな感じでした。

―― それでこんなに間が空いたんですか。

:うん。

―― 4巻でちらっと見せて、5巻、6巻、7巻、8巻、9巻と出てこないので。

:そうなんですよ。

―― それが展開してくるまでに結構、間があるんですよね。それは、じゃあ、ご自身がちょっと迷ったり、ためらったりしてらっしゃったけど、タブチさんが……。

:タブチさんが、今だ行け行け!って。

―― このキャラクターについては、行け!というのが来たのがここだったと。

泰三子は前田日明である

:まだ私はのほほんとしていたかったんですけど、「頑張れ!」と急かされた感じですね。

―― そういうことだったのか。

タブチ:忘れた頃に何かぶっ込むのを喜ぶ読者の方がたくさんいるんだなとは思いましたね。

―― いやタブチさん、それは喜びますよ。

タブチ:出すぞ、出すぞじゃなくて、すうっと埋もれさせておいて、3巻か4巻くらい後で、うわ、いきなり来たというのに大喜びしている人がたくさんいる。

―― それ、うれしくないですか。

:いや、うれしいですよね。

―― めちゃめちゃうれしいですよ。

タブチ:昨日も話していたんですけど、『ハコヅメ』は、一昔前のプロレスで言うと前田日明みたいな扱いになっている。

―― プロレス、分からないです。

:分からないですね。

タブチ:つまりプロレスの観客はショーとして楽しんでいるのに、前田日明だけは突然、ショーからシュート(ガチンコ)を仕掛けてくる。いきなり相手の脚を折りにいくとか。その結果、こいつはいつ何をやるか分からんエンターテイナーだ、と認知されているという。

―― 確かにそうかもしれない。これ、褒め言葉として聞いていただきたいんですけど、実は『ハコヅメ』は、すっきり分かりやすい話ばっかりでは全然ないですね。

:そうです。

タブチ:そうですね。

:全然、そういうつもりじゃ描いてないですね(笑)。なぜかと言えば、分かりやすい感じの話ばかりだと今の時代はお金を払ってもらえないという。

―― うっ?! メディアはこぞって「分かりやすさ」に走っている中で、それ、グサッときますね。

(次回に続きます。8月9日公開予定です)

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