©泰三子・講談社/ハコヅメ製作委員会
©泰三子・講談社/ハコヅメ製作委員会
[画像のクリックで拡大表示]

タブチ:今日は泰さんの制作スタジオ見学があったんですよ。

―― それで上京された。ということは告知のご要望がありますね?

:いえ、実は何の商業的戦略も立てずに、この場におります。ノープランで大人が4人、ホテルのティールームに座ってお待ちしてました(笑)。「Yさんに会いたい」で、今、取りあえず来ていただいているというのが実態で(笑)。

―― 本当ですか。光栄ですけど、何かアピールしたいこととか。

:いえ特に。

タブチ:ありませんね、はい。まあ、単行本情報だけ入れていただければ。

―― じゃ、本当に聞きたいことだけ聞いていいんですかね。

:もちろんです。

じゃあ聞きたいことだけ聞きますね

―― ありがとうございます。実は、いろいろ予習してきたんです(付箋だらけの『ハコヅメ』単行本数冊と、プリントしたエクセルの表をリュックから引っ張り出す)。

:うわあ、すごい。ありがとうございます。

―― 本当は全17巻と『ハコヅメ別章 アンボックス』も、もう全部持ってきたかったんですけど。

:いやいや、大変すぎる。

―― 交番勤務の女子の先輩後輩の身も蓋もない職場実録と下ネタを恐れない勇気、が印象的な『ハコヅメ』ですが、さらに大きな魅力は、周到に巡らされた伏線ですよね。単行本を読み返すと「あっ、ここにもうネタが仕込まれているぞ」と気づいて、止まらなくなって、自分なりにまとめてみました。

タブチ:ありがとうございます。

:すごい。うれしい。

「伏線はみんな後付けです(笑)」

―― で、こういうことを作家さんに聞いていいのかな、どうなのかなと思いつつも、こういう伏線って、本当に最初から考えているのかな、もしかしたら……あー、ダメだったら書かないでって言ってくださいね。「もしかしたら後付けでこういうこともできるのかな」、とか、考えちゃうんですが……。

:(喰い気味に)ほとんど後付けです(笑)。全部、後付けって書いていただいても全然大丈夫です。

―― えっ、本当なんですか。

:はい。

―― うーん……話が飛びますし、泰さんはおそらくご興味もないし、ご覧になったこともないでしょうけど、「スタートレック」というテレビSFシリーズ、ご存じですか(当初の邦題は「宇宙大作戦」)。

:ああ、ごめんなさい。分からないです。

―― 米国の国民的な人気番組で、地球人とバルカン人という宇宙人のハーフ、ミスター・スポックとかが出てきて、宇宙の様々な星の文明を巡るお話なんですけど。

タブチ:泰さん、昔、しましたよね、「スタートレック」の話。

講談社ヒロタニさん:何度かしましたね。

:その時、別のことを考えていたかもしれないです(笑)。

―― スタートレックは、1960年代に作られて、何度も何度も続編やスピンオフが制作されているんですね。で、新作では、大昔に作られたテレビシリーズの中にあったちょっとしたエピソードを絡めて「実はこういう裏がありました」というストーリーを作るのがものすごく上手なんです。

タブチ:うまいですね。

:ああ、そうなんですね。

―― 「これは最初のテレビシリーズの段階で、こういう(新作の)サブストーリーが伏線として考えられていたとしか思えない」なんて、制作者が真顔で言い出すくらいなんですが、つまり、「後付けでも“伏線として回収”はできる」というひとつの例ではあると思うんです。そんなこと言ったら作家さんに失礼かなと思って、もうちょっと話が温まってからお聞きしようと思ったんですが、うれしさのあまり先走りました、すみません。

:いやいや、うれしいです。ありがとうございます。担当編集さんにはそんなに興味を持ってもらえてない部分なので、聞いてもらえてうれしいです(笑)。

―― えっ。

作家を手伝うのが仕事、ではない

―― 泰さんはよくタブチさんの「放し飼い」っぷりをネタにされますが(こちら)、どれぐらいが本当なんですか。

タブチ:いやいや、もう本当ですよ。いつも打ち合わせでは泰さんに「これから1週間、ネーム(脚本に相当。マンガの場合は、コマ割りにセリフを入れたもの)を苦しまなきゃいけないんですよね。でも、編集者は作家に楽をさせるんじゃなくて、作品を面白くするのが仕事です。自分は一切手を出さない方が面白くなると信じているので頑張ってください」って、必ず言うんです(笑)。

―― ……そんな言い方があったとは。

タブチ:はい。手伝うのが仕事じゃない。手伝った方が面白くなるときは、めっちゃ手伝いますけど、まあ、私はどっちかというと口を出すことが多い編集者ですけど、この人は……。

―― 泰先生に限ってはもう放し飼いが。

タブチ:放牧が絶対いいと。

―― すごく信頼を置いているということですね。

次ページ 4巻目に付箋がたくさん付いたんですけど