―― こうやって話していても、おっさんの自分が一番感情移入したのは鈴木じゃん、みたいに感じるんですよね。ほかの皆さんは魅力的だけれど、色々すごすぎますよね。

江口:宇津帆は何を考えているのか分からないし、アキラもちょっと超人なのでね。

アキラは「野性のエルザ」

―― 主人公のアキラは監督の中ではどういう人なんですか。

江口:第1作のときに岡田さんにも言ったかな。岡田さんには言ってないかな。ときどき言っているのが、めっちゃ古い例えで申しわけないですけど、「野生のエルザ」だと思っているんですよ。

―― 「野生のエルザ」?! 分かってもらえるかな(笑)。これは注記が要りますね。ウィキペディアのリンクを張っておきます(こちら)。

江口:殺し屋として幼い頃から教育されてきたアキラは、人間社会の中でのライオンなわけです。そのライオンが野性を抑えて、人間とうまく慣れていくことができるか、という話だと。野性=暴力性をコントロールすることで、「普通」という社会性や常識を獲得できるのかってことでもあるんですが、「本当に溶け込めるの、溶け込ませることがお互いに幸せなの」というテーマも含まれていると思っているんです。

―― 殺しをせず普通に暮らしているうちに、だんだん普通の人間になっていくのかもしれない。一方で、その高過ぎる能力が、良くも悪くも周りの普通の人間を刺激することもある。

江口:そうそう。アキラの中には、我々が忘れている野生の「野性」がやっぱり存在している。アキラを例えるときはそうよく言っていて、ヒナコ役の平手(友梨奈)ちゃんに対しても「アキラという野生の存在に出会うことで、ヒナコは光を見つけていくんだよ」という話をよくしていて。

―― おおっ、そういうことか。

江口:野生の人間が変えていくんですよね、いろいろな人たちを。ある意味健やかにしていくのかもしれない。

―― ありましたね、そういう場面。

ファブルと不思議な縁でつながるヒロイン、佐羽ヒナコ(平手友梨奈) ©2021「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」製作委員会
ファブルと不思議な縁でつながるヒロイン、佐羽ヒナコ(平手友梨奈) ©2021「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」製作委員会

―― ここはもう劇場で観てもらうしかないんですが、この鉄棒の場面とラストが、こう、なんというか……なわけですよね。私、原作を完全に忘れていたおかげで、うっ、そうくるかと思ってびっくりしました。まさしく映画ならではだと思います。

江口:そうですね。あれも本当にどうするか悩んだところで、ある意味一番大きく迷ったかもしれない、実は。

―― そうですか。

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