江口:第1作の面接で一番聞かれたのは、「外国人アクション監督を立てる予定があり、その場合、監督が一切口出しできないかもしれない。それでも大丈夫か」という話でしたね。

―― ああなるほど。

江口:たぶんそれが一番確認したかったんじゃないかな(笑)。結局は、当たり前ですけど口出ししましたが。

―― その第1作の「ザ・ファブル」(2019年6月公開、21年6月18日テレビ放映予定)と、続編の今回の「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」を、2作続けて見たんですけど、がらっと雰囲気が変わりましたよね。

江口:そう思いました?

―― 私はそう思いました。

江口:どんなふうに違うと思いました?

―― 1作目はストレートなアクションコメディで、監督には不本意かもしれませんけど、「見たあと何も残らない」というか、すかーんと体の中を抜けて爽快感だけが残る映画で、じゃ、2作目はさらにそこをブローアップしてくるのかなと思っていたら、アクションは1作目よりも派手でさらに爽快だったけれど、見たあとで、意外に心の底に沈んでくるものもある。思い返してみれば原作の『ザ・ファブル』もそういう話だったなあ、と。

江口:そうなんですよ。それは僕の中での、何というか、ある種の方針なんですけど、1作目のときって、これ、いい意味でですよ、ずっとCMを撮ってきて、テレビドラマを撮って、「ガチ星」を撮って、そして「メジャー作品1本目」、ということで、僕の中ではやっぱりみそぎ的な部分もあって、いろいろな映画関係の人たちに対するごあいさつ的なこともあるし。

―― 江口カンの名刺代わりでございますと。

バットマンとスパイダーマン、どちらが日本で受けるか?

江口:一番最初にこの話が来たときに、松竹のプロデューサーから面白い話を聞いて。何かというと、「バットマン」と「スパイダーマン」があるじゃないですか。海外では、まあ、海外ってアメリカ市場のことだと思うんですけど、海外では「バットマン」が人気がある。でも日本では「スパイダーマン」のほうが圧倒的に人気がある、というんですよ。

―― え、そうなんですか?

江口:意外でしょう?

―― どれどれ……ざっと検索すると確かに日本でも興行収入はスパイダーマンの圧勝なんですね。スパイダーマンの歴代1位は75億円(「スパイダーマン」2002年)。バットマンはあの「ダークナイト」(08年)で16億円、「ダークナイト・ライジング」(12年)で19.7億円か。同時期のスパイダーマンと比べると07年の「スパイダーマン3」が71.2億円、12年の「アメイジング・スパイダーマン」が31.6億円。完敗です。

江口:ね、そうなんですよ。

―― 「男はみんな『ダークナイト』好き」(『東京タラレバ娘』、作:東村アキコ)とか言いますよね。自分も大好きなんですけれど、あれは東村先生が言うとおり、男にしかウケない映画なんでしょうか。

江口:男性にしか、というより、たぶん映画が好きだったり、ある程度視聴体験があったりする人には刺さるんでしょうね。もっと普通の、業界の人は「ライトユーザー」と言っていますけど、そういうそんなに(映画を)しょっちゅう見ない人にはスパイダーマンのほうが人気がある。じゃあ、なぜそうなるか。

―― おお、なぜなんですか。

江口:「スパイダーマン」は、色が明るい赤と青だから。「バットマン」は黒で全体的に暗いから、という話をされて。

―― えっ。

江口:そう、聞いたときは、「えっ、そんなものなの」と思ったんだけど、あまりに面白い話なので、1回乗っかってみようかなと思って。

―― むしろ乗ってみようと。

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