
「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」――どんな相手も6秒以内に仕留める伝説の殺し屋“ファブル”(岡田准一)。ある日、ボス(佐藤浩市)から「一年間、誰も殺すな。一般人として“普通”に生きろ」と命じられ、佐藤アキラという偽名で、相棒・ヨウコ(木村文乃)と共に一般人のフリして暮らし始める(映画ホームページより抜粋)
人気コミック『ザ・ファブル』(作:南 勝久)を映画化したこの作品は、新型コロナの直撃を受け、制作、公開ともスケジュールが大変なことになりました。コロナ禍と戦った側面にも触れつつ、監督の江口カンさんにお話をうかがいます。(聞き手:編集Y)
(映画の予告編はこちらから)
―― 「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」、新型コロナの影響で延びに延びて、ようやく公開日が決定(2021年6月18日)されたそうで。江口カン監督、まずはおめでとうございます。
江口カン監督(以下、江口):ありがとうございます。
―― 岡田准一さん、堤 真一さん、そして平手友梨奈さんと、豪華な俳優陣に盛りだくさんなアクション、人気コミックの実写化……というお話はたくさん記事が出ると思いますので、経済誌の日経ビジネスらしく、それ以外のところからいきたいと思います。
江口:えっ(笑)。
―― この映画が完成したのはいつなんでしょう。
江口:できたのは2020年末、本当に年末ギリギリでした。この時点では21年の2月5日公開予定でしたから。

―― 完成というのは編集が済んであとは上映するだけ、という意味ですよね。全部撮り終わったのは?
江口:撮り終わったのは(20年)8月です。
―― 編集ってそんなにかかるんですか。
江口:かかりましたね。やっぱり時間がかかるのって、CGとか合成とか音楽とか効果音。
―― ポストプロダクションってやつですね。
江口:ポスプロですね。何だかんだ、ちゃんとやろうと思うと時間がかかるので、むしろスタッフは大変だったと思いますね。それこそ新型コロナの影響で、撮影が予定より1カ月ちょっとぐらい遅れたんですが、でもケツは決まっていたんで。
―― あ、そうか、ケツが決まっているから。
江口:そうなんです。だからポストプロダクションの作業時間としては1カ月短くなっているわけなので。
―― なるほど、それは大変だ、確かに。
江口:かわいそうなところにムチ打って。
公開が延びても、手を入れられるわけじゃない
―― でも、こういう事情で、不可抗力で公開まで時間が延びると、「じゃあ、ねちねちポスプロをやり直そうよ」とか、そういうことにはならないんですか。
江口:そこは予算は決まっているので……。
―― そうか、お金か。
江口:それができたら最高ですけどね。むしろそれができたらラッキーと思っちゃいますかね。
―― そうですね、締め切りが延びたらいつまでも触っている。
江口:締め切り日じゃなく、「できた!」と言えたときが完成日だ、って言いたいですけどね(笑)。
―― 江口さんは、映画のどこに一番時間をかけてねちねちやりたくなるんですか。
江口:各段階であるんですけどね。でもこれは映画に限らず、先に来る行程ほど、しくじるとあとでフォローが難しくなってくるので、まずは脚本ですかね。
―― おおっ、確かにそこはもう直らないですもんね、撮っちゃったら。
江口:そうなんですよ。撮りながら変える部分も多少あるけど、やっぱり幹はね、大きな幹は変えられないから。
―― そうか、そうか。
江口:準備に関していうと、確かにクランクインが延びたら、その分準備に時間をかけられるので、そのときはまだラッキーだなと思いますけど。
―― その辺はCMのお仕事と比べると?
江口:時間的な規模が違うだけで、やっぱり一緒ですよ。もちろん違うところもあって、よく聞かれるのですけれど、すごくざっくり言っちゃうと、CMは尺(時間)が短い分、瞬発力とか「うっちゃり」で何とかなったり、むしろそこで盛り上がったりするんですよね。「うおっ、ここでうっちゃりか」みたいに。
―― そうか、映画はおいそれとうっちゃるわけにいかない。
江口:うっちゃった後と前のことを考えながら作っていかなきゃいけないので。美しいうっちゃりが一発決まればそれでいいかというと、その前後がちぐはぐだったらむしろ悪目立ちしたりするので、違いといえばそこは大きいかなという気がします。
―― そもそものお話になっちゃいますけれど、前作の映画「ザ・ファブル」(19年公開)、つまり『ザ・ファブル』(作:南 勝久)の実写化第1作の監督を、というオファーは、「ガチ星」を見た松竹の方が「江口さん、やりませんか」と来た話ですよね。
江口:そうです。
―― 言いにくければカットしますが、その時点でこのマンガをご存じでしたか?
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