©2021「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」製作委員会

ザ・ファブル 殺さない殺し屋」――どんな相手も6秒以内に仕留める伝説の殺し屋“ファブル”(岡田准一)。ある日、ボス(佐藤浩市)から「一年間、誰も殺すな。一般人として“普通”に生きろ」と命じられ、佐藤アキラという偽名で、相棒・ヨウコ(木村文乃)と共に一般人のフリして暮らし始める(映画ホームページより抜粋)

 人気コミック『ザ・ファブル』(作:南 勝久)を映画化したこの作品は、新型コロナの直撃を受け、制作、公開ともスケジュールが大変なことになりました。コロナ禍と戦った側面にも触れつつ、監督の江口カンさんにお話をうかがいます。(聞き手:編集Y)

―― 「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」、新型コロナの影響で延びに延びて、ようやく公開日が決定(2021年6月18日)されたそうで。江口カン監督、まずはおめでとうございます。

江口カン監督(以下、江口):ありがとうございます。

―― 岡田准一さん、堤 真一さん、そして平手友梨奈さんと、豪華な俳優陣に盛りだくさんなアクション、人気コミックの実写化……というお話はたくさん記事が出ると思いますので、経済誌の日経ビジネスらしく、それ以外のところからいきたいと思います。

江口:えっ(笑)。

―― この映画が完成したのはいつなんでしょう。

江口:できたのは2020年末、本当に年末ギリギリでした。この時点では21年の2月5日公開予定でしたから。

江口カン(えぐち・かん) 福岡出身、KOO-KI所属。ドラクエ(出演:のん、北大路欣也)、スニッカーズなど多数のCMを演出。Webムービーでは、「Baseball Party」(トヨタ)や「COME ON! 関門!」(北九州市・下関市)などのヒット作品を手掛け、国内外にて異例の視聴数を獲得。07-09年、カンヌ国際広告祭で3年連続受賞。13年、東京2020五輪招致PR映像「Tomorrow begins」のクリエイティブ・ディレクションを務める。ドラマ「めんたいぴりり」が日本民間放送連盟賞・優秀賞(2年連続)、ギャラクシー賞などを受賞。劇場映画作品は、デビュー作「ガチ星」(18)が「映画芸術」2018日本ベスト10にランクイン、その後「めんたいぴりり」(19)、「ザ・ファブル」(19)と続いている。(写真:大槻 純一)

―― 完成というのは編集が済んであとは上映するだけ、という意味ですよね。全部撮り終わったのは?

江口:撮り終わったのは(20年)8月です。

―― 編集ってそんなにかかるんですか。

江口:かかりましたね。やっぱり時間がかかるのって、CGとか合成とか音楽とか効果音。

―― ポストプロダクションってやつですね。

江口:ポスプロですね。何だかんだ、ちゃんとやろうと思うと時間がかかるので、むしろスタッフは大変だったと思いますね。それこそ新型コロナの影響で、撮影が予定より1カ月ちょっとぐらい遅れたんですが、でもケツは決まっていたんで。

―― あ、そうか、ケツが決まっているから。

江口:そうなんです。だからポストプロダクションの作業時間としては1カ月短くなっているわけなので。

―― なるほど、それは大変だ、確かに。

江口:かわいそうなところにムチ打って。

公開が延びても、手を入れられるわけじゃない

―― でも、こういう事情で、不可抗力で公開まで時間が延びると、「じゃあ、ねちねちポスプロをやり直そうよ」とか、そういうことにはならないんですか。

江口:そこは予算は決まっているので……。

―― そうか、お金か。

江口:それができたら最高ですけどね。むしろそれができたらラッキーと思っちゃいますかね。

―― そうですね、締め切りが延びたらいつまでも触っている。

江口:締め切り日じゃなく、「できた!」と言えたときが完成日だ、って言いたいですけどね(笑)。

―― 江口さんは、映画のどこに一番時間をかけてねちねちやりたくなるんですか。

江口:各段階であるんですけどね。でもこれは映画に限らず、先に来る行程ほど、しくじるとあとでフォローが難しくなってくるので、まずは脚本ですかね。

―― おおっ、確かにそこはもう直らないですもんね、撮っちゃったら。

江口:そうなんですよ。撮りながら変える部分も多少あるけど、やっぱり幹はね、大きな幹は変えられないから。

―― そうか、そうか。

江口:準備に関していうと、確かにクランクインが延びたら、その分準備に時間をかけられるので、そのときはまだラッキーだなと思いますけど。

―― その辺はCMのお仕事と比べると?

江口:時間的な規模が違うだけで、やっぱり一緒ですよ。もちろん違うところもあって、よく聞かれるのですけれど、すごくざっくり言っちゃうと、CMは尺(時間)が短い分、瞬発力とか「うっちゃり」で何とかなったり、むしろそこで盛り上がったりするんですよね。「うおっ、ここでうっちゃりか」みたいに。

―― そうか、映画はおいそれとうっちゃるわけにいかない。

江口:うっちゃった後と前のことを考えながら作っていかなきゃいけないので。美しいうっちゃりが一発決まればそれでいいかというと、その前後がちぐはぐだったらむしろ悪目立ちしたりするので、違いといえばそこは大きいかなという気がします。

―― そもそものお話になっちゃいますけれど、前作の映画「ザ・ファブル」(19年公開)、つまり『ザ・ファブル』(作:南 勝久)の実写化第1作の監督を、というオファーは、「ガチ星」を見た松竹の方が「江口さん、やりませんか」と来た話ですよね。

江口:そうです。

―― 言いにくければカットしますが、その時点でこのマンガをご存じでしたか?

続きを読む 2/5 なぜ『ザ・ファブル』実写化のオファーが自分に来たのか

この記事はシリーズ「編集Yの「話が長くてすみません」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。