(前回まではこちらから)

自分の人生最後?のクルマ、その開発者にゴリゴリ聞く
 マツダCX-30 開発者インタビュー(その1)

我が娘はクルマに興味ゼロ、なのに感じた「クルマの味」
 マツダCX-30 開発者に聞く(その2)

自分のクルマを50万円ほど高く感じる方法(個人の印象です)
 マツダCX-30 開発者に聞く(その3)

 前回は、自分のCX-30について不満に感じていた加速時の動きとアクセルペダルの踏み込みのつながりの悪さと、その理由の大半が自分のシートポジションの合わせ方にあったことを、(恥を忍んで)紹介させていただいた。人間の骨格を研究して作られたシートに正しく座れば、足のコントロール幅が広がり、ペダルを思うように踏めるようになる。そうするとクルマがとても走らせやすくなる。アタマでは分かっていたが、カラダで納得させられるとびっくりする。

 自動車経済評論家(こちら)の池田直渡さんによるポジション出しとその効果があまりに衝撃的だったので、試乗記を長く書きすぎてしまって途中で終わらざるを得なくなり、今回が最終回。最後の最後まで長いです。タイトルの意味は最後までお読みになると分かります。どうぞお時間のあるときにごゆっくり。

マツダ広報・岡本さん(以下岡本):(CX-30/MAZDA3は)どのエンジンタイプにおいても、ドライバーが気持ちよく自在に駆動力を操れるように、アクセルペダルの操作角度を固定要素として、エンジ ン出力や AT の変速タイミングなどを 制御因子としてきめ細かくチューニングしています。その結果、ディーゼルエンジンなど分厚いトルクでも自在にコントロールできる、気持ちよい走りを実現しています。

―― 人の「骨レベル」で考えて、こうでなくてはならない、という固定要素を固めて、クルマごとの違いは変動要素として吸収する、ってことですね。

マツダ CX-30開発主査 佐賀尚人さん(以下、佐賀):その骨レベルの基点が、「シートで骨盤をしっかり支えよう」ということなわけです。骨盤が立った姿勢でしっかり支えられていれば、人間はシートの上であたかも車につながっているような形になるんです。そうするとリラックスして足を動かせる。これがアクセル、ブレーキの繊細な操作にもつながる。

―― これって昔から分かっていたことなんですか。

佐賀:いや、人間の身体を研究する中で、「僕たちのやりたいことってこういうことだったよね」というのを理解していった、と言った方がいいと思います。

―― 研究はいつぐらいから。

佐賀:初代のCX-5、我々が第6世代と呼んでいるんですけど、あのころからですね、地道にそういった研究をしてきたのは。

 それまで我々マツダの中ではそこまで踏み込んだ考え方はなかった。でも、「どういうふうに座ってもらえれば、我々が考える理想のドライビングポジションになるのか」を理屈で、ほら、先に申し上げた(※第1回のラスト参照)なにしろ「理由の説明」ができないと許してもらえなくなりましたから(笑)、一生懸命考えるわけです。そして人間の身体の構造から、例えばメルセデスとか昔の車とかヨーロッパの「いいクルマ」というものを見ると、「ああ、確かに理屈に合っている」と、僕らも納得していった。そういうところはすごくあります。

みんなが手に手に「骨」を持ち出した

―― (第2回の)理想を実際に見ながら理屈で納得していく、みたいな話ですね。「教科書があって、そこに書いてある正解に向かっていく」というものではなくて、かつての成功例や独自の経験値みたいなものの中から、自分自身でいろいろ解析の手を入れていって、そして「人の骨に行き着く」と。

佐賀:はい、みんなが手に手に骨を持ち出したという。いや、「ついに骨を持つところに行き着いた、そこから始まった」、という話なんですよ。

―― 「2001年宇宙の旅」みたいだな……これ、本当に懐かしいんですが、6年前にムッシー、いや虫谷泰典さん(現: 車両開発本部 操安性能開発部 上席エンジニア)がフェルさんの取材で話していたこととそのまんま直結ですね(2015年1月13日~2月23日掲載)。三次の試験場の会議室で、虫谷さんはまさに人体模型や運動理論の専門書を持ち出して解説を始めて、我々一同、そしてマツダ広報の方も含めて「ぽか~ん」となっていた。それがじわじわ理解者を広げて、とうとう量産車に反映されるに至ったと。

最初に虫谷さんにお会いしたのは2015年の1月、三次の寒い会議室でも半袖姿、ボディアクション付きで「人間の構造」について解説中。

まだ生き残っている3年前の過去記事に、この話(6年前)を踏まえての虫谷さんのお話がありました。さらにこの流れの最新版のリポートが、近日中にフェルさんの記事で載る……かもしれません。

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第446回 マツダ「虫谷講座2018」 その4

佐賀:そういうことです。もうちょっと分解してご説明すると、我々は以前から「人馬一体」と言っていますよね。ここも「そもそも人馬一体って何なんだろう」という話になったんですね。言葉通りに考えるとケンタウルスみたいな、人の上半身と下が馬の生物なのか。

 それが意味するところは、「歩くのと同じように、何も特別に意識せずに思い通りに動ける」ということなんだろうと。右に行こうとしたら「右に行くにはどうするんだっけ」と考えずに行ける。もっと突き詰めると、人間は考えずに立っていられる。そのとき、骨盤が立っている。その状態が一番手も振れるし運動もできる。

続きを読む 2/7 理想を押し付けるのも間違っている

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