マツダのSUV、CX-30は我が家に昨年(2020年)4月に納車された、自分(編集Y)自身のクルマである。

取材した企業改革の成果を自分で試す、みたいな

マツダ CX-30
マツダ CX-30
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 納車のさらに1年前、マツダの会長を務め「モノ造り革新」を先導した金井誠太氏(当時は会長、現相談役)へのインタビューを『マツダ 心を燃やす逆転の経営』で書籍化する機会に恵まれた。本で語られた企業変革の、そのひとつの“結論”がどんなものなのかを、自分のお金を使って実際に試すという、なかなか得がたい経験になったわけだ。

※話の流れがいかにもなのでおことわりです。言うまでもありませんが購入時はマツダから一切便宜を受けないように細心の注意を払いました。その甲斐あって値引きはほんとにほんとに渋かった(汗)。あとでディーラーの担当の方に聞いたら、「実は自分でお名前を検索して、マツダの本を出された方だと知りました。上からは特に何も指示はありませんでした」とのこと。

 CX-30が手元に来てからもうすぐ1年になる。コロナ禍の中家族旅行にも行けず出番は少なかったが、田舎の母の施設入居などの急場を助けてくれた。

 気に入ったのかどうかと聞かれれば、もちろん気に入っている。だが、特に納車初期は、それまで15年(車齢は25年)乗ったおんぼろメルセデスの残影が色濃かったこともあり、前のクルマとは対照的な美点も、そして「どうしてこうなる?」と思った点もあった。

 そうなると悪いクセで根掘り葉掘り聞きたくなる。「モノ造り革新」のアウトプット、マツダの「新世代商品(いわゆる第7世代)」の最初のステップとして「MAZDA3」とともに生まれた「CX-30」の狙いと成果、そして疑問を、ユーザー目線で「こちとら自腹だ」と、堂々と聞けるチャンス。うむ、これぞジャーナリズムではあるまいか?

 いやいやしかし、結局は「自分のクルマ」についての話。ハードな経済メディアであるはずの日経ビジネスのウェブページに、プライベートな内容まで含めていいものか? まして自分は自動車評論家ではないんだし。というか、これって単なる役得企画って言われるんじゃ……。

 で、開発者インタビューは行ったのだが、実は記事にするに当たってどういう形がいいのか悩んでしまい、そのうちに単行本や新型コロナの連載、新書、と予想外の事態が次々起きて、すっかり時間がたってしまった。このままいくと、連載の中でお約束していた(していたんですよ)、「『モノ造り革新』のリアル-マツダ復活の証言」の続きをもくろんだこの企画もオクラ入りしてしまう。

 もうハラは括った。自分でクルマを買う機会が今後あるかどうか疑問だし、今書かないとこんな企画は一生書けない。素人目線で感じた限りのことだけど、何がなんでも最後まで書く。企業改革の結果が製品にどうつながり、それを1ユーザーがどう評価したかを個人的な事情や感覚も含めて、可能な限り正確に正直に書く。何か意味はあると信じて書きます。
 そしてもし可能でしたら、この記事の前段に当たる「どんな改革があったのか」を、先述の本や連載で目を通していただけると、改革がこのクルマに至る背景が見えてきて、より面白くお読みいただけると思います。

 いつもながらの長い記事と長い前書き、平にご容赦を。

古いベンツに乗るサラリーマン、21世紀のクルマを買う

CX-30開発主査 佐賀尚人さん(2021年3月時点での役職は、商品本部副本部長兼 商品企画部長)。透明のついたてを挟んでインタビューしていたので、窓の光が反射していますがご容赦を。撮影時はマスクをはずしていただきました。(Y)
CX-30開発主査 佐賀尚人さん(2021年3月時点での役職は、商品本部副本部長兼 商品企画部長)。透明のついたてを挟んでインタビューしていたので、窓の光が反射していますがご容赦を。撮影時はマスクをはずしていただきました。(Y)

マツダ CX-30開発主査 佐賀尚人さん(以下、佐賀):(企画趣意書を取り出し)ラブレターをありがとうございました。夜に読ませていただいたんですが、まずいですね、夜にラブレターを見ると、まずい。こっちも何かそのまま思わず長文を返してしまいそうな雰囲気になりました(笑)。

―― お恥ずかしい(笑)。こちらも夜に書いていたのでなんだか盛り上がってしまいました。

マツダ広報辻本氏(以下、辻本):Yさん、購入までの試乗記をお送りくださったんですよね。

―― はい。実は最初からCX-30と決めていたわけではなくて、国産車も輸入車も、SUVからセダン、ハッチバックまでいろいろ試乗しました。おそらく人生最後の新車購入になりそうなので(笑)。

辻本:それで決めてくださった、ありがとうございます。

―― ただ、乗り較べて思いましたが、試乗の印象は「直前に乗ったクルマ」にものすごく影響されますね。私はプロの自動車評論家さんでも開発者でもないので、自分の中に絶対的な評価軸がない、あくまで相対評価で感じることしかできないんです。

佐賀:それはもうほとんどの方がそうですよね。

―― 特に私は、2005年から20年までずっと古いメルセデス・ベンツに乗っていて。

佐賀:ラブレターにありましたが、いわゆる「124」(1985~94年の「Eクラス」)でしたよね。マツダでもベンチマークに持っている名車です。

―― ありがとうございます。私が作ったわけじゃないですが、そう評価しているメーカーさんがあることはファンとしてすごくうれしいです。あのクルマのマナー、操作感、乗り心地がものすごく気に入って15年乗り続けたんですけれど、その分、124との相対評価で、クルマが良く見えたり悪く見えたりもする。言い換えると私は、「21世紀のクルマ」を自分のものとして乗ったのはこれが初めてなんです。お聞きすること(そしてこの連載でお話しする自分のインプレッション)は、そういう前提のものとお考えください。

佐賀:分かりました。なんでも聞いてください。

―― と、いろいろ前置きしましたけれど「買ったよ」と言って取材に来る人っていないですよね。マウンティングをしてくるインタビュアー(笑)。

佐賀:いえいえ、自動車メーカーの人間にとって「オーナーの方と話せる」というのは、その方のお立場やご職業を問わずやっぱりうれしいものですよ、すくなくとも私は。

―― 「うちの子どうですか。頑張っていますか」みたいな。

マツダ広報岡本氏(以下、岡本):ちなみに自分もオーナーです。佐賀も買っていますのでCX-30乗りがここに3人いることになりますね。

―― 岡本さん、買ったんですか?

岡本:買ったんですけど、広島で嫁がずっと乗っているんです。単身赴任だから。

―― 何を買いました?

岡本:2リットルのガソリンエンジンのプロアクティブですね。

―― 色は?

岡本:赤です。

―― ああ、いいですね。うちは「赤は派手で恥ずかしいからダメ」って娘に言われまして。

佐賀:うちもレッドですね。ガソリンエンジンのLパケ(Lパッケージ)にしましたけど。Yさんはディーゼルですね。

―― そうです。試乗したらディーゼルエンジンが欲しくなって、じゃ、その分グレードを下げようと考えたんです。そうしたら我が奥様が「360度モニターとか安全装備をケチる? ますます加齢で鈍くなるのに?」って突っ込まれ、ディーラーの方には「えっ、UV(紫外線)カットガラスを省くんですか」とびっくりされて。「いや、今までずっと普通のガラスの車に乗っていたから平気」と言ったんですけど、その場の雰囲気が「……大丈夫かな、分かってるのかな」みたいになったんです。

佐賀:なるほど。

―― 結局、ディーゼルエンジン搭載のプロアクティブ、もろもろフル装備になっちゃって。

佐賀:全部付きにして。

―― はい、シートは布が良かったのでLパケはやめて、あとはてんこ盛り。「やったぜ」と思ったら、奥様から「価格差の分、あなたのお小遣い減らすわね」という話に。

続きを読む 2/5 ガラスがえらいことになっていた

この記事はシリーズ「編集Yの「話が長くてすみません」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。