:そうですね。そうじゃないと、ちょっと家庭に影響が出てしまうので。

 子どもがまだ小さいというのもありますし、なにより、時間を区切って、自分を仕事から切り離さないと、いつまでもだらだらやってしまうなと思いました。自宅でできる仕事というのは、そこが怖いですよね。

タブチ:確かに、リモートワークの怖いところでもありますね。

―― じゃあ、週刊連載を長期間続けるために、そういう体制が必要だなと考えて、作戦として始められて、それを維持していらっしゃる、ということですね。

:そうですね。

―― すげえ。タブチさん、こういうマンガ家さんってほかにいらっしゃるんですか。

タブチ:いや、あまり存じ上げないですね。でも、まあ、お子さんがいる方は割り切りが早いという傾向はお持ちですね。

―― 割り切り。

「割り切り」ができるかどうかも、週刊連載には重要

タブチ:マンガ家の方は、良くも悪くもなかなか割り切りをされないんですよ。

―― ああ、全部自分で描きたいし、とことんまでこだわりたがるし、ぎりぎりまで迷いたがるし、と。

タブチ:でもお子さんを育てている育児や介護などの事情のある方は、別の重要なものがあるので、両立のために割り切る決断ができる。

―― 90%を95%にするために倍の労力を使うのであれば、90%でよい。ということですね。

:ネームが終わってしまえば、あとは肉体労働じゃないですか。絵を描くだけなので。

―― そうですけど。そうか。

タブチ:まあ、「ネームが終われば肉体労働」とおっしゃるマンガ家さんはもうやっぱり割り切っている人ですよね。

―― そういえば以前お会いした井上雄彦先生(『SLUM DUNK』『バガボンド』作者)は、葉っぱの葉脈を描くのが楽しくて、いつまでも描いていたい、とおっしゃっていましたね。

タブチ:『ヒストリエ』の岩明均先生も、マケドニア軍の槍を一本一本自分で描くのが楽しくてしょうがないと……。

―― ああ……。『乙嫁語り』の森薫先生も、遊牧民の刺しゅうの一針一針を、楽しそうに描いていらっしゃるんだろうなあと読んでいて思います。

編注:『ヒストリエ』は講談社「月刊アフタヌーン」連載の、紀元前4世紀のギリシャ世界を舞台とする歴史マンガ。『乙嫁語り』はKADOKAWA「青騎士」連載の、19世紀後半の中央アジア周辺を舞台とする遊牧民の生活を描くマンガ。どちらも編集Yは強くお薦めします

ヒストリエ
乙嫁語り

タブチ:「自分の手で歴史を、文化を再現している」ということなんだと思いますよ。そうなる方もいらっしゃるし、そうならなければいけないわけではない、という。

―― いろいろな創作方法があるのがマンガの楽しいところで。

タブチ:あと、アシスタントさんへのアウトソーシングがうまくいっているという部分もあると思います。うまいスタッフさんをリモートでちゃんと使っていらっしゃるということですね。

:いつも大変助けていただいてます。

―― なるほど。そもそもの話になっちゃうんですけど、泰さんは警察官時代に体力を培われたと思っていましたが、警察官はそもそも勤務時間が不規則だし、仕事上、無理もさせられますよね。どのように体力を維持向上されたんでしょうか。

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