10年勤めた警察を退職して、週刊連載のマンガ家になって、初の連載『ハコヅメ ~交番女子の逆襲』が累計400万部の大ヒット。

 “異世界転生”級の転職を果たされたマンガ家、泰三子(やす・みこ)さんにその「仕事の流儀」を学ぶ――ビジネス書の広告調に言えばそんな感じでしょうか。日経ビジネス電子版でご好評をいただいた、泰さんへのインタビューをベースに、警察官時代のお話と、『ハコヅメ』の名場面、作品を深く楽しむための「警察コラム」などを収録した単行本、『「ハコヅメ」仕事論』がこのほど発売となりました。週末には書店さんに並ぶ予定です。

泰三子さん書き下ろしのカバーイラスト。(C)泰三子、講談社
泰三子さん書き下ろしのカバーイラスト。(C)泰三子、講談社

「ハコヅメ」仕事論 女性警察官が週刊連載マンガ家になって成功した理由

―― と、告知をさせていただいたところで、泰さん、本当にありがとうございました。

なぜ警察官はビジネス本を読むのか

泰 三子さん(以下、泰):おつかれさまでした。本でもお話ししましたけれど、警察官はビジネス本をよく読んでいますので、とてもうれしかったです。

―― インタビューの記事を読んだ方がツイッターで「この記事を本で読みたい」とつぶやいてくださったのですが、なかなか本にする切り口が思いつかなかったんです。でも、泰さんからそのお話を聞いて「なぜ組織力の権化のような警察官がビジネス書を読むのだ? それが分かればビジネスパーソン向けの書籍にできるかも」と思ったんですよね。

講談社タブチさん(以下、タブチ):それで警察時代のお話をがっつり聞かれたんですね。

―― しつこくてすみませんでした。警察官は、部下にある程度以上慕われないと仕事にならない世界なんですね。よく分かりました。

:よかったです(笑)

―― そして、警察を「会社」と見立てると、業務がある意味極端なので、中の人の人事やジェンダーの問題も極端なかたちで表れるんですね。だから、課題や解決策がむしろ分かりやすい。例えばジェンダーについては、泰さんの警察時代のお話のおかげで、私は「自分がよく分かっていなかった」ことが、しっかり理解できました。

タブチ:そう言われるとすごく普通のビジネス書のようですが、私は「日経BPがこんな思い切った本を出していいのか」と驚きました(笑)。

:えっ、そうなんですか。あれ、思い切っているんですか。

タブチ:元がコミックのお話とはいえ、ビジネス書でこんなに笑わせていいのだろうかと。

―― まあ、弊社の本としてはかなり思い切っているかもしれません。でも、いつもそうですが自分本人は、当然のことながら大真面目に編集・執筆しております。泰さんもおっしゃっていますが、まず笑うなり、面白がっていただかないと、伝えたい話って伝わりませんから。

『ハコヅメ』の大きなテーマの一つ、ジェンダーと働き方(「第4章 女子の働き方、友情、成長」より) (C)泰三子、講談社
『ハコヅメ』の大きなテーマの一つ、ジェンダーと働き方(「第4章 女子の働き方、友情、成長」より) (C)泰三子、講談社
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―― 販促はこのくらいにしまして(笑)、せっかくですから、書籍に載せきれなかったテーマを伺ってみたいと思います。

:はい、なんでしょう。

―― 仕事と体力。

:体力ですか。

―― 正確に言うと、自分が気分よく働ける体調を維持するための工夫、ですかね。泰さんのお仕事は、新人のころから「進行はメチャクチャいい」と、タブチさんが言っていたじゃないですか。夜に電話で打ち合わせをしたらその反映が翌日朝に上がってくる、なぜなら、警察ではそれが当たり前だったから、と。

:はい、そうですね。編集の方が昼に出社されるのは知りませんでしたけれど(笑)。

―― あはは。最初にお聞きしたときは、これは体力あればこそだなと思っていましたが、どちらかの媒体のインタビューでお仕事のスケジュールの話をされていたのを読んで、あ、基礎体力というより、生活習慣の話じゃないかと気がついて。泰さんが「月~金の8時から17時勤務の土日休み」で、マンガのお仕事をされているというのは、本当なんでしょうか。

:そうですね。8時から17時勤務ですね。ほとんど。

―― 本当なんですね。これは週刊連載を始めたころから意図的に自分で考えて、そのペースを組み立てていらっしゃったんでしょうか。

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