新型コロナの変異ウイルス「オミクロン」が徐々に拡大しつつある状況ですが、日々我々が心がける点は変わっておりません。一方で、これまでの2年間を無駄にしないためにも、先のことは考えておかねばなりません。

 新型コロナ感染症治療の現場を担ってこられた埼玉医科大学 医学部総合医療センターの岡 秀昭先生と、本欄でおなじみの峰宗太郎先生に、日本の新型コロナ対策を振り返って、今考えるべき課題は何なのかを語っていただきます。

岡 秀昭(おか・ひであき)
埼玉医科大学 医学部総合医療センター 総合診療内科/感染症科 教授
2000年日本大学卒。日本大学第一内科で研修後、横浜市立大学、神戸大学、東京高輪病院などを経て、2020年7月より現職。

岡 秀昭先生(以下、岡):峰先生、初めまして、よろしくお願いします。

峰 宗太郎先生(以下、峰):初めまして、どうぞよろしくお願いします。

 進行を担当する編集Yです。よろしくお願いいたします。お二人は初顔合わせなんですね。

:直接お話しさせていただくのは初めてなんですけれども、岡先生は臨床で新型コロナ感染症(COVID-19)を診られている先生の中で、一番しっかり情報を発信されていて、なおかつ、おそらく専門家の中でも実際に相当数の症例を診られている方のおひとりだと思います。

 弊社の「日経メディカルオンライン」にも寄稿していただいてますね。現場の状況がリアルに伝わってくる、なのに冷静な筆致で、これは自分のようなど素人でも読む価値があると常々思っておりました。特にこちらの回には、うーん、と。

「胸が痛い」とも言わない。それほど咳込むわけでもなく、喘鳴もなく静かだ。全員ではないもののそれほどハーハー、ドキドキもしていない。至って静かなのに酸素のモニターだけ下がる。パルスオキシメーターを見なければ重症化に気付かない。患者は静的だ。
ここで人工呼吸器を選択しない場合、静かにやがて呼吸が止まる。

これが私の経験してきたCOVID-19患者の最期だ。

私は研修医にこれまで、「データや画像ばかり見ずに患者の声をよく聞け、丁寧に全身を診察しろ」と指導してきた。しかし、COVID-19に関しては、「患者の見た目にだまされるな。モニターのデータを注意深く観察しろ」と助言したい。

日経メディカル「COVID-19の重症化 自覚症状より酸素飽和度を重視せよ

 実体験からの知見の圧倒的な迫力を感じます。

:今回のわたしたちの本(『新型コロナとワクチン わたしたちは正しかったのか』)は、現状で新型コロナについてほぼ確実に言えることのまとめ、そして、日本の新型コロナへの対応は正しかったのかどうかの、現時点での振り返りを行っているんですが、当初からずっと現場に立たれてきた岡先生にもぜひご意見をいただきたいと考えて、お願いしました。体調のお悪い中すみません。(岡先生は新型コロナの診療に携わる中で、難病の自己免疫疾患を発症し、現在治療中)

:最近はちょっといいですよ。

:本当ですか。よかったです。先生の投稿を拝見していますので、大変な中、最適な医療を実践されているな、と感じております。

:この1年で、私自身が健康な人から免疫不全者になっていますので。感染症の専門家で、そういう立場で新型コロナを見ている人はあまりいないと思います。新型コロナ病棟に入る免疫不全者の気持ちというのを知っている感染症の医師というのも、ちょっと特殊だと思いますけれども(笑)。今回は、治療法のお話がよろしいんですか?

 いえ、もう、何なりと。この2年間を振り返っていただければ。

:そして岡先生が今もっとも「課題だ」と思っていることをぜひお願いしたいと思います。

:分かりました。今、この病院(埼玉医科大学総合医療センター、埼玉の新型コロナ診療の中核となっている病院)の病院長補佐、という形で、病院を挙げての対策をやっていく上で、日本の医療現場でなかなか苦労することがあるんですが、これが政治側になかなか伝わらない。

 苦労することとは。

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