クレカに使いすぎの不安を感じるユーザーを取り込む

 BNPLサービスとは、ユーザーがECで決済する場合はサイトに電話番号などを入力。リアル店舗で決済する場合は専用アプリのQRコード画面などを提示して、決済する仕組み。ユーザーは決済終了後、登録済みの自宅に郵送されてくる請求書を使い、コンビニエンスストアや郵便局、銀行などで指定の期限までに支払いを済ませればよい。

 クレジットカードを持てない消費者はもちろん、カードを持っていても、「クレジットカード番号をWebサイトに入力するのは不安」「分割払い(リボ払い)で金利を負担したくない」「いくら決済しているかすぐに分からず、使いすぎが不安」といった思いを持つユーザーが、BNPLを好んで利用しているという。

 日本では、BNPLサービスの「NP後払い」や「atone」を提供するネットプロテクションズ(東京・千代田)などが市場をけん引してきた(参考記事「『後払い決済』が日本で急成長 クレカのライバルとなるか」)。取引データをAI(人工知能)などで分析・活用する事業者各社の与信審査システムが、このBNPLサービスを可能にしている(参考記事「後払い決済の『NP後払い』 システム刷新で即時与信審査を実現」)。改正割賦販売法が施行されたおかげで、独自の与信審査システムを構築したフィンテック系スタートアップ企業が、新たにこの市場に参入しやすくなったわけだ。

都度返済して与信枠が復活するクレカが登場

 21年9月、新興フィンテック企業ナッジ(東京・千代田)が、次世代クレジットカードと銘打った「Nudge」の発行を始めた。ファミペイ翌月払い同様、改正割賦販売法で新設された登録少額包括信用購入あつせん業者の仕組みを活用して、早期に立ち上げたサービスだ。カードの利用上限額は10万円で、ユーザー一人ひとりにつき、AIを使った審査で与信枠を付与する。

次世代クレジットカードと銘打って21年9月から発行を開始した「Nudge」(写真/新関雅士)
次世代クレジットカードと銘打って21年9月から発行を開始した「Nudge」(写真/新関雅士)
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 あくまでクレジットカードなので厳密にはBNPLサービスではない。しかし、BNPLサービスを好むと見られる若者層を狙い、返済の仕方にBNPLのメリットを取り込んだ後払いサービスと位置づけられる。このため、後払い市場の拡大に貢献しそうだ。

 その最大の特徴は、専用アプリから加入申し込みをする際、引き落としのための銀行口座を登録する必要がないことだ。「カードで決済した翌日からセブン銀行ATMで返済し、返済した分だけカードの与信枠が復活する。使った翌月末までに返済すれば金利も発生しない」(ナッジ社長の沖田貴史氏)という仕組みだ。

記者会見でNudgeについて解説するナッジ社長の沖田貴史氏(写真/新関雅士)
記者会見でNudgeについて解説するナッジ社長の沖田貴史氏(写真/新関雅士)
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 それどころか、これまでのクレジットカードなら当たり前だった勤務先や年収、家族構成などはもちろん、性別やメールアドレスさえも申込時に記入不要。それでいてユーザーは、申し込み後に郵送されてくるICチップ内蔵クレジットカードを使って、店頭やECなど場所を問わずに決済できる。専用アプリを使えば、今どれくらいカードで決済したか、あとどのくらい使えるのかといった情報をリアルタイムで管理・表示もできる。「ユーザーの立場に立って、使い勝手を工夫した」と沖田氏は語る。

 しかもNudgeは普及のための仕掛けをもう1つ用意した。スポーツクラブやアスリート、アーティストのファンクラブと提携し、1枚からでもカードを発行する「クラブ機能」がそれだ。

 ユーザーはまず自分の好きなスポーツクラブやアーティストが発行する提携カードを選択。カードの利用金額が一定に達するとクラブから特典をもらえる。またユーザーが店で買い物をしたときに店が支払う決済手数料の一部は、クラブに還元される。これまでの現金や他の決済手段による買い物をNudgeによる決済に置き換えるだけで、ユーザーも喜び、クラブの運営にも貢献できる仕組みだ。提携クラブを増やすことで、そのクラブのファンの加入を促す。既にプロサッカーチーム「ブラウブリッツ秋田」(Jリーグ、J2)、プロバスケットボールチーム「岩手ビッグブルズ」(Bリーグ、B3)、アーティストの加藤ミリヤのファンクラブなどと提携関係を締結済み。今後は「提携したクラブからの紹介で、徐々に提携クラブを増やしていく」(沖田氏)という。

 これまでクレジットカードを持ちたくても持てなかった20~30代の若者層をメインターゲットに据える。事実上のBNPLサービスのような使い方と、返済するごとに与信枠が復活する仕組み、それにクラブ機能を提案し、他のクレジットカードや決済手段とに違いを打ち出して普及を図る作戦だ。今後3年で50万人のユーザー獲得を目指し、将来は「若者層のメインカードの座を狙う」(沖田氏)という。

Nudgeの専用アプリ画面の例(出所/ナッジ)
Nudgeの専用アプリ画面の例(出所/ナッジ)
クラブがユーザーに与える特典を示す画面の例(出所/ナッジ)
クラブがユーザーに与える特典を示す画面の例(出所/ナッジ)
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