日本でキャッシュレス決済の普及を加速させるためのカギの1つは、中小小売店の導入の動き。そしてもう1つ、このところ活発になっているのが、「BNPL(Buy Now, Pay Later)」と称される、クレジットカードなどを使わない後払い決済を巡る動きだ。米決済大手ペイパルは、日本でBNPLサービスを展開するスタートアップ、Paidy(東京・港)を約27億ドル(約3000億円)で買収すると2021年9月に発表。日本でのBNPLの普及を後押しする。BNPLは日本で普及し、キャッシュレス決済を推し進める役割を担えるのか──。最近のBNPL関連の動きを追った。
「ファミペイ翌月払いスタートキャンペーン」の告知画像(出所/ファミリーマート)
「ファミペイ翌月払いスタートキャンペーン」の告知画像(出所/ファミリーマート)
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 ファミリーマートが提供するQRコード決済サービス「ファミペイ」が、2021年9月7日からひっそりと提供していた「ファミペイ翌月払い」というサービスがある。

 決済するときにチャージ金額が不足していても、その不足額が、ユーザー一人ひとりに付与された最大10万円という与信金額の上限以内であれば、その場で決済が完了。不足分は原則翌月末に登録済みの銀行口座から引き落とされるというサービスだ。

 分割払いはできないが、翌月の引き落としを最大6カ月先まで延長(スキップ)することができる(この場合は手数料がかかる)。クレジットカードなどを持たなくても、銀行口座さえ持っていれば「後払い」ができるため、流行(はやり)のBNPLサービスの1つと位置づけできる。

現金チャージから銀行チャージへの移行を狙う

 ファミリーマートは、この「ファミペイ翌月払い」の利用を積極的にファミペイユーザーに推奨する考え。そのため21年10月1日から「ファミペイ翌月払いスタートキャンペーン」を開始した。

 ファミペイ内のチャージが足りなくて買いたいときに欲しいものを買えない、というユーザーの機会損失を防いで利便性を引き上げると共に、「ファミペイ利用客の大半が利用する」(ファミマデジタルワン取締役執行役員金融・マーケティング事業推進本部 本部長代行 兼 金融業務部長の辻昭平氏)というコンビニエンスストア店頭での現金チャージから、事前に登録した銀行口座からの銀行チャージへの移行を促し、決済以前のチャージの段階でのキャッシュレス化を加速させるのが狙いだ。

 具体的には、ファミペイアプリから銀行口座を登録・設定し、ファミペイ翌月払いを申し込むと、500円相当のファミペイボーナスがアプリ上で付与される。さらに、21年10月に利用したファミペイ翌月払い利用分の50%を、ファミペイボーナスで還元(上限1000円分=2000円の購買まで)するというものだ。

 辻氏は、「もともと『ファミペイ』のサービス開始前から、ユーザーの間に後払いへのニーズがあることは感じていた。そこへたまたま割賦販売法の改正とその施行があったため、法律にのっとったサービスとして構築・提供することにした。現在の銀行チャージの利用分を100としたら、うち50くらいをまずは翌月払いで利用してもらい、その後、現金チャージの利用者にも翌月払いを利用してもらえるようにしていきたい」と狙いを語る。

ファミペイ翌月払いを解説するWebサイト
ファミペイ翌月払いを解説するWebサイト
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改正割賦販売法で独自の与信が認められる

 実はファミペイ翌月払いは、21年4月に施行された改正割賦販売法で新たに加わった「登録少額包括信用購入あつせん業者」の仕組みを活用している。法律の定めにより与信枠10万円の上限があり、また従来のクレジットカード会社と同じく、利用者の借り入れ情報を集約している指定信用情報機関CIC(シー・アイ・シー、東京・新宿)の信用情報を確認する義務もある。その代わりに、従来、経済産業省が求めてきた「包括支払可能額見込調査」は実施せず、自社で蓄積したビッグデータなどを活用して与信を簡略的に実施してもよいという新制度だ。

 ファミリーマートは、ファミペイの利用履歴などからスコアを導き、与信の上限額を計算する仕組みを新たに導入。CICへの照会と併せて、一人ひとりの与信上限額を決めている。与信の審査は、日中で、事前に本人確認や銀行口座登録を済ませていれば、「5分で完了する」(辻氏)という(夜間については現在CICへの照会ができないため、翌日朝に完了見込み)。この改正割賦販売法が、日本市場のBNPL、さらに言えば後払いの普及を後押ししそうだ。

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