新たなテーマは「レジリエント」な都市機能

 一方、スマートシティXとは別軸で進んでいる日本でのスマートシティを巡る取り組みを見渡すと、内閣府が推進する「スーパーシティ」構想を含め、実に多くのプロジェクトや構想が立ち上がっている。2011年の東日本大震災からの復興を目指し、行政などのデジタルシフトを進めてきた福島県会津若松市をはじめ、千葉県柏市、札幌市、さいたま市、福岡市など、有力都市が続々とデジタルを活用した「未来のまちづくり」に乗り出している。

 そんな中、東京都も、19年12月に「『未来の東京』戦略ビジョン」を発表し、それを実現するための具体的な取り組みとして「スマート東京実施戦略」を定め、都市のDX化を強力に推し進めている。5G基地局の設置場所として都道や公園などの都が保有するアセットの開放、教育、医療、交通などのデジタル技術によるスマート化、都庁のデジタルシフトなど、その取り組みは広範囲にわたるが、異例のスピード感で前進している。スマート東京をけん引する元ヤフー社長の宮坂学副知事は20年2月の発表会見で、ベースとなる5G推進について、「都市が丸ごとネットワークにつながることで新しい価値を生み出せる。まずは、西新宿をいち早く“つながる街”にしていく」と宣言した。

 その西新宿の他、スマート東京の先行実施エリアとしては、大手町・丸の内・有楽町(通称・大丸有)や、竹芝、豊洲も名を連ねる。例えば、大丸有エリアでは20年3月に、2040年を完成期とする「大手町・丸の内・有楽町地区スマートシティビジョン・実行計画」を発表。データを利活用してリアルタイムの意思決定を可能とする都市OSの構築や「大丸有版MaaS」の展開、都市のリデザインの方向性が示されている(関連記事「東京都心「大丸有MaaS」が始動へ 世界初デジタル都市計画の全貌」)。

 こうしたスマートシティの動きの中でも、コロナ禍を受けて注目されるのが、感染症や災害に対してレジリエント(回復力のある)な都市機能をいかに高めていくかだ。これは、世界のスマートシティにおいて最も重要なキーワードになりつつある。

 例えば大丸有では、MaaSアプリを用いて災害時の情報提供、被災状況の登録などを行えるようにし、都市データを可視化するダッシュボードでは災害時の要支援者と支援員のマッチング状況や、受け入れ施設の混雑度、道路の通行止め状況など、エリアの状況が一目で分かるような想定がされている。もちろん、withコロナ時代に求められる混雑回避や需要の平準化に役立つサービスにもつながるはずだ。

大丸有版スマートシティにおける都市データを可視化するダッシュボードのイメージ(画像/大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会)
大丸有版スマートシティにおける都市データを可視化するダッシュボードのイメージ(画像/大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会)
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 また、物販店から飲食店、会議室まで、ニーズに合わせてフレキシブルに都市機能をインストールできる箱型モビリティの活用を計画する中で、災害時にはその箱型モビリティが仮設救護所に、サイネージポールが災害情報の発信端末に成り代わり、負傷者の探索や臨時の携帯基地局になるドローンが飛ぶ姿を描く。都市によって活用するテクノロジーやアプローチは様々だろうが、こうした“非日常”にも強いまちづくりは生活者視点の上でも最重要といえるものだ。

 withコロナ時代を踏まえて、都市の何がどんなふうにスマートになれば、人々の暮らしをアップデートできるのか。次回からは、現在立ち上がっている最新のスマートシティ計画やモビリティ、IT、建築分野の専門家の視点から、これから形づくられる「未来のまち」の一端をひもといていく。

※この記事を含む特集「withコロナ時代の「都市DX」」は日経クロストレンドに掲載されています。

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