ダブルプラン利用者は退会しなくなる

 定着期の顧客にはまず、ダブルプランを半額で利用できるキャンペーンを案内する。期間は3カ月だ。「より高額なダブルプランを定着させるには、3カ月程度の体験は必要だと考えている」と児玉氏は言う。すると約3割がそのままダブルプランを継続利用するという。さらに、「ダブルプラン利用者はまず退会しない」(児玉氏)。交換時に手元からバッグがなくなるという不満が解消され、いよいよやめられないサービスになっていくわけだ。

 最後のフェーズが「成熟期」。優良顧客の心をさらにつかんで離さない施策を展開する。まず、CtoC(消費者間取引)サービス「ラクサスX」だ。使わないバッグをラクサスに預けると、ラクサスが修復など貸し出し可能な状態に整備したうえで、レンタル商品として掲載する。バッグが貸し出されると、貸し出した日数に応じて収入を得られる。得られる収入は1個当たり、最大で年間2万4000円だ。ラクサスXを通じて副収入を得ることで、よりお得にサービスを使えるようになる。

ラクサスは顧客を3つのフェーズに分け、各フェーズでカスタマーサクセス施策に取り組むことで、継続率を高めている
ラクサスは顧客を3つのフェーズに分け、各フェーズでカスタマーサクセス施策に取り組むことで、継続率を高めている
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 20年7月に始めたのがレンタルして気に入ったバッグを購入できるサービスだ。これまでも検討をしていたが、購入すると解約率が高まるのではないかという懸念があり、試験的な提供にとどまっていた。試験提供する中で、購入した人のほとんどはサービスを解約しないことが分かってきた。むしろ、普段から使っていることから、ラクサスの扱うバッグの品質に信頼を持っているため、安心して購入してもらえることが分かった。「直近でも購入を促すと、3.5%が購入したデータが出ている」(児玉氏)。CVR3.5%と考えれば非常に高い数値だ。

 「サービスを継続利用するにつれ、2個持ちたい、購入したいといった新しい欲求が顕在化してくる。そこに応えていくことが、定着期以降のカスタマーサクセスでは重要だ」と児玉氏は要点をまとめる。

 カスタマーサクセスは単に継続率を高めるだけが利点ではない。カスタマーサクセスが成功して、満足度が高まるほど、その顧客がアンバサダーとなり、サービスを広めてくれる。それが新しい顧客を呼ぶ。カスタマーサクセスのKPIとしても、NPS(ネット・プロモーター・スコア)が使われることが多い。NPSは一言で言えば推奨度だ。導入したサービスを他者にも推奨したいかどうかをアンケートで可視化する。カスタマーサクセスに成功すると、顧客が顧客を呼ぶ好循環がつくれる可能性がある。

 ラクサスには知人の紹介制度がある。紹介した知人が1カ月以上バッグをレンタルすると、紹介者に2000ポイントが付与される。この制度を通じて、100人以上の新規顧客を紹介した優良顧客が30人以上いる。中には500人超を紹介した顧客もいる。「カスタマーサクセスが成功すると、広告しなくていい世界になってくる」と児玉氏は言う。新規顧客獲得のための広告費を削減できれば、その分をサービスの開発に当てられる。それが結果的にさらなる顧客体験につながり、継続率が高まる。カスタマーサクセスは企業と顧客の双方にメリットをもたらすのだ。

※この記事を含む特集「成功が客を呼ぶ カスタマーサクセス」は日経クロストレンドに掲載されています。

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