ロボットは、障害者など外出困難な人が社会参加するための技術を開発するオリィ研究所(東京・港)の「OriHime(オリヒメ)」だ。今回の実験に協力したパイロットの1人、兵庫県在住で神経性の難病を持つ23歳の酒井麻椰さんは「普段は主に家族としか話さないので、たくさんの人と話すことができて充実しています。続けられるならいくらでもやりたい」と話す。

 今回の実験は平日14時から18時までの4時間。多いときには1日で30人ほどがゆっくりレジを利用したという。人手不足の解消、温かみのあるサービス提供、新型コロナの非接触対策、外出困難な方の社会進出サポートといった複数の効果を狙い、将来はドライブスルーの受け付け、トレイを持った自走可能な分身ロボットで飲食物を店内で運ぶといった業務でも、導入の検討を進める。

 「この前マヤちゃんがお薦めしてくれた飲み物がおいしかったのでまた来ましたよ」などとリピーターの獲得にもつながっているという。オリィ研究所の吉藤健太朗CEO(最高経営責任者)は「頑張っているあの人に会いたいからまた来たくなるというこれまでのファストフード店になかった価値観、モデルを作った」と語る。自身が不登校だったという経験を経て、障害者や高齢者でも孤独を解消でき、社会に必要とされるための技術を開発してきた。

 Zoomを入れたタブレットなどを設置すれば同じことが実現できそうだが、「そこにその人がいる、という感覚を作り出せる点がZoomとは全く異なる」と吉藤氏は説明する。Zoomでは、あくまでも遠隔地にいる人と対話しているという感覚になる。ロボットを使うと「人形劇を見ているかのように、命が吹き込まれる。話しかけるお客さんも感情移入ができ、リアクションも変わる」(吉藤氏)。

オリィ研究所の吉藤健太朗CEO
オリィ研究所の吉藤健太朗CEO

 新型コロナウイルスの影響により、事業継続が困難となっている飲食店も多い。そうした中でも「人を軸としたコミュニティーが形成できている店舗は強い。あの人がいるから行きたいとお客さんが集まる」(吉藤氏)。近年は規模の大きさと無駄の削減を追求した米アマゾンのようなサービスが発展したが「(withコロナという)変化の時代だからこそ、細分化したコミュニティーを起点としたビジネスが広がる」と吉藤氏は展望する。

 実証の場はさらに広がっている。20年1月には全長120センチメートルで自走可能な「オリヒメ-D」を使い、全国に住むパイロットが接客をする「分身ロボットカフェ」を東京・渋谷で開催。NTT持ち株会社も、20年2月からオリヒメ-Dを使った受付業務を実施している。

 全長23センチメートルのオリヒメのレンタル料金は月額で法人向けは1台で4万円から、個人向けは2万円から。「既存のビジネスに当てはめ、障害があっても高齢者でも、孤独にならず、必要とされる関係性を築き、働く人の幸福を追求する」(吉藤氏)ことを目指す。

羽田空港の案内にもアバターロボット

 緊急事態宣言時と比べて徐々に人出が戻りつつあるとはいえ、まだ感染拡大への警戒が続く東京・羽田空港。本来は制服を着た担当者が座っているはずの案内所には、誰もいない。「ご案内中」というプレートを掲げた席に鎮座しているのは、愛嬌(あいきょう)のある丸みを帯びたロボット「MORK(モーク)」だ。「この便に乗るのですが、どこに行けばいいですか」。搭乗客が話しかけると、「あちらに見えるBの保安検査に向かってください」などと返す。「ロボットさん、バイバーイ」という子どもの呼びかけにも手を振って応える。

羽田空港の案内カウンターで稼働するアバターロボット「MORK(モーク)」
羽田空港の案内カウンターで稼働するアバターロボット「MORK(モーク)」

 ロボットを開発したのは、映像製作やデジタルサイネージを手がけるインディ・アソシエイツ(名古屋市)。同社は空港内の施設を紹介する案内版のサイネージを手がけてきた。よりインタラクティブな案内をするための手段としてアバターロボットを開発した。当初はVRゴーグルを使ってロボットを操作する仕組みを作ったが、現在はゲーム用のコントローラーを使って誰でも簡単に扱えるようにしている。

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