天井に設置されたカメラ群。白くて四角いのがAIカメラ。黒い球状レンズのカメラは防犯カメラ
天井に設置されたカメラ群。白くて四角いのがAIカメラ。黒い球状レンズのカメラは防犯カメラ
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 そのトライアル長沼店では、スマートショッピングカートと購入データを使ったレコメンドだけを展開しているわけではない。天井や棚、冷蔵ケースなどに計688台のAIカメラを設置して、店内の人の流れや棚に陳列された商品の欠品情報、商品を手に取る人の動きなどを撮影してデータ化し、分析している。

 永田社長は、「データ化することでお客様の動きが見えるようになることが重要」と強調する。例えば、AIカメラが撮影した画像データを分析すれば、顧客が新商品を陳列した棚の前で足を止めるかどうか、実際に手に取ったかどうかが分かる。POSデータと突き合わせれば、足を止めたら購入してもらえる商品なのか、足を止める割には購入してもらえない商品なのかが判定でき、その後の対策を取りやすくなるというわけだ。

リテールパートナーズが外部企業で初めてカートを採用

北九州市にあるアルク到津店の外観
北九州市にあるアルク到津店の外観

 20年7月9日には、リテールパートナーズ(山口県防府市)傘下のスーパー、丸久(同)が、トライアルグループ以外で初めて、同グループが開発したスマートショッピングカートを、北九州市にあるスーパー「アルク到津店」に40台導入した。トライアル長沼店で展開する、データを活用したレコメンドをここでも実施し、1人当たり購入単価の向上や来店頻度のアップを目指す。

アルク到津店内でスマートショッピングカートを使って買い物をする顧客
アルク到津店内でスマートショッピングカートを使って買い物をする顧客

 リテールパートナーズの田中康男社長は、「永田(社長)さんが唱える『AIで小売りに革命を』という言葉に共感した。これを実現させたくて、まずはカートとデータの活用を組み合わせた取り組みを導入した。今後、次の店では、カートだけでなくAIカメラやデジタルサイネージも導入して本格的なスマートストアとして展開し、きちんと実績を上げていきたい」と狙いを語る。

リテールパートナーズの田中康男社長(左)とRetail AIの永田洋幸社長(右)
リテールパートナーズの田中康男社長(左)とRetail AIの永田洋幸社長(右)

 実際、データ分析によるレコメンドがなくても、カートやAIカメラの導入は、店の業績アップに貢献している。レジに並ばずに決済できるなどカートの導入で買い物がしやすくなって顧客の来店頻度が上がったり、AIカメラによる分析で欠品を迅速に把握し、販売機会ロスが減ったりしているからだ。

 Retail AIの横山顕悟マネジャーは、「あるトライアルグループの店では、スマートショッピングカートの導入前後で、顧客の来店頻度が平均14%アップ。また、別のトライアルグループの店では、AIカメラの導入で欠品を把握し、必要な商品を迅速に補充できるようになった結果、生鮮カテゴリーの売り上げが約12%向上した」と語る。ここにデータ分析による顧客行動の予測を加えれば、さらなる業績改善が見込めるというわけだ。

 現在、スマートショッピングカートの導入店は20店、AIカメラの導入店は6店だ。「関東にも初めてスマートストアを出し、グループ外の小売店にもスマートショッピングカートを採用していただけた。新型コロナウイルスの感染拡大で、リアル店には非接触という要素が強く求められる時代にもなる。今後はさらに、こうしたスマートストアを拡大していきたい」と永田氏は語る。

 そのためには、「データを多くのメーカーに提供し、メーカーに率先して小売り現場に入ってもらって、店の改善を進められるか否かが、重要になる」(永田氏)。顧客の動きを把握し、その動きを予測できるようなデータをどのように集め、メーカーや卸と協力してどのように分析していくのか──。トライアルグループの挑戦はまだ始まったばかりだ。

店舗のスマート化を推し進めるトライアルグループ、Retail AIの永田社長(取材終了時に一瞬マスクを外してもらって撮影しました)
店舗のスマート化を推し進めるトライアルグループ、Retail AIの永田社長(取材終了時に一瞬マスクを外してもらって撮影しました)

(写真/志田彩香)

※この記事を含む特集「動きを予測するデータ活用最前線」は日経クロストレンドに掲載されています。

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