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withコロナを前提にしたとき、リアル店舗における接客やオペレーションなど、様々な面で従来のやり方を見直さざるを得ない。リアルの店舗を事業の核に置いていた業種・業態にとって今後どんな施策が必要か、どこまでの変革が可能か。withコロナ時代への対応に試行錯誤するリアル店舗の最前線を取材した。

三越伊勢丹は2020年5月30日から、Zoomを使ったオンライン接客を開始。まずはランドセルの販売からスタートした

 新型コロナウイルス感染症との共生を前提にしたとき、リアル店舗における接客やオペレーションなど、様々な面で従来のやり方を見直さざるを得ない。オンライン接客やロボットの活用なども視野に入ろう。リアルの店舗を事業の核に置いていた業種・業態にとって今後どんな施策が必要か、どこまでの変革が可能か。withコロナ時代への対応に試行錯誤するリアル店舗の最前線を取材した。

 百貨店業界も、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、長期間にわたる休業を余儀なくされた。百貨店大手の三越伊勢丹も、2020年4月8日から5月29日まで全館臨時休業した。だが、そんな苦境の中でも構想を練り、5月30日からオンライン会議システムのZoomを使ったランドセルの販売に乗り出していた。

伊勢丹新宿店。コロナ禍も一つのばねにして、デジタルシフトを進める

 オンラインで接客するのは、伊勢丹新宿店でベビー・子供服雑貨を担当する専門スタッフだ。ランドセルは通常、4月ごろに翌年春の新1年生用のモデルが出そろう。だが、ブランドによって素材や重さなどの特徴が異なり、色や形のバリエーションも豊富。そのうえ、平均価格帯は6万~8万円と高額だ。子供に実際に背負わせてみて、合うかどうかを確かめてから買いたいという人も多い。なぜランドセルをZoomで接客販売しようと考えたのか。

「LINE・Zoom・来店予約」の3段階で顧客をカバー

 三越伊勢丹によると、同店舗のランドセル商戦は例年4月からスタートし、5月の大型連休にピークを迎える。連休中の売り場の来店客数は合計1万人弱にものぼるという。祖父母も交えて多人数で来店する家族も多いため、売り場は“密”の状態になりがちだ。

 連休中には催事スペースを使って大々的にフェアを開催する予定だったが、新型コロナウイルスの影響により20年3月の時点で中止を決定した。結果的に連休中は店舗を閉めることになってしまったが、ECは5月7日から再開。そのランドセルの売り上げは19年同期比で120%に伸長していた。

 「ランドセルは試着時間が長い。そのため、売り場で商品を絞り込んで、ECで決済するという人が年々増えていた。今年は来店が難しいため、試着をせずにECで購入した人も多かったのではないか」と三越伊勢丹新宿子供営業部の杉澤元一部長は話す。

 だが、例年はかなりの数の顧客が売り場に訪れていたことを考えると、潜在的なニーズはもっとあるはずだと考えた。ECの購入を迷っている人をサポートする手立てさえあれば、さらに売り上げを伸ばせるのではないか。そこで思いついたのが、オンライン接客だった。

Zoom接客の前に、LINEのチャットでやり取りをし、商品をある程度絞り込んでおく

 オンライン接客の手順は3段階。LINEでのチャット、Zoom、そして来店予約という順だ。最初にLINEによるチャット相談を行い、子供の性別や素材、色の好み、そして重さや希望の価格などをヒアリングする。LINEアカウントは今回の施策のために新たに取得したものではなく、以前からあったベビー・子供服雑貨の公式アカウントを使うことにした。オンライン接客を行うことを告知して以降、LINEアカウントの「友達登録」数は約5倍に増えたという。

 チャット相談である程度まで商品を絞り込んだうえで、Zoomを使った接客に移行する。予約制で時間は1組40分。「これまでは商品を絞り込まず、来店して実物を見て決めるという人も多かった。だが、チャットで情報を引き出して商品を絞り込むことで、接客時間の短縮につながった」(杉澤氏)。20年5月30日にスタートし、すでに約50組を接客した(20年6月15日時点)。