イノベーションとは、社会課題の本質に気づき、その課題解決に果敢に挑戦する過程で生まれるもの。この実現に有効なのが、デザインマネジメントという考え方だ。今回は、事業創造に必要な「視点」に焦点を当てる。本講座を読み、さらに興味を持った読者向けに、21年4月に行われ大好評のうちに終わったセミナー「デザインマネジメントによるイノベーター育成講座」11月からオンラインで再開講する。

 連載1回目で、デザインマネジメントがどのようなものか、概略を理解していただけたかと思う。では、そのデザインマネジメントを実践し、事業を創造するにはどうしたらいいのだろうか。今回は、そのための「視点」について解説したい。

 人はものを見る際に、自分の中にあるバイアスの力が大きく働いてしまう。そのため、できるだけ俯瞰(ふかん)する視点を養うことがとても重要だ。まずは、自分がかなり狭いところでしか生きていないということを感じてもらいたい。広い視点を持つことができれば、いろいろな可能性があるのだということに気づくことができる。最初は、その気づきだけでもいい。

 では、どのようにすれば俯瞰的な視点を持てるようになるのだろうか。

 インターネットや書籍で多くの情報を読みあさるのもいいだろう。昔は、海外の事例などを知るのは、かなり大変だった。今は、ネットでいくらでも情報が得られる時代だ。実は世の中には、自分の常識では考えられなかったようなことをやっている人がたくさんいるのだと気づくことができるだろう。

 また、体験を広げるということも大切だ。

 例えば「高級とは何か」を知るために、高級ホテルに泊まってみるといい。高級ホテルの価格が高く設定されているのには、やはり理由があるのだ。一流のホテルには一流のものが置いてあり、空間やサービスもそれに見合うものが提供されているのである。そうしたものに価値を感じ、その価格が見合っていると考える人がいると知ることが大切なのだ。

「何か」を知ることは、それを体験することも大切だ。高級ホテルに宿泊してみるのもよい。サービスを体験することで、上質とは何か、一流とは何かを考えるきっかけになるだろう(写真:Shutterstock)
「何か」を知ることは、それを体験することも大切だ。高級ホテルに宿泊してみるのもよい。サービスを体験することで、上質とは何か、一流とは何かを考えるきっかけになるだろう(写真:Shutterstock)
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創造性とは脱平均を目指すこと

 例えば、パンメーカーのマーケティングマネジャーが、その高級ホテルのパンを食べてみたとする。自分だったらもっとこうするのに、というものが出てくるかもしれない。その気づきこそが、高付加価値な価格帯の商品開発につながる。高付加価値のパンを売るには、どんな空間づくりをすればいいのか、接客の仕方はどうすればいいのか、などといった、お客様とのコミュニケーションの方法も決まってくるだろう。

 自分は、どういう満足をつくりたいのか、誰を喜ばせたいのかを考えることが非常に重要だ。そこに1本の柱を通すには、その周りに絡まっているものをちゃんとひもとかないと見えてこない。その価格を成り立たせている要素は何なのかを理解するために、要素分解が必要になってくる。そして、その中にあるエッセンスをくみ取って、自分なりのオリジナルなものにしていくことが大切だ。高級ホテルのパンと同じではまったく意味がないからだ。自分が良いと思えるものを融合させて新しい価値をつくる。創造性とは脱平均を目指すことなのである。

続きを読む 2/2 視点を磨くためのデッサン

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