※日経トレンディ 2020年6月号の記事を再構成
新型コロナの影響で、オフィス企業には「出社する人数を最低7割減に」という要請が政府から出た。当初は7都府県だけだったが、4月中旬には緊急事態宣言が全国に及び、テレワークに移行できるかどうかが全国の企業にとってまさに死活問題になっている。その中でひときわ存在感を増しているのが、ビデオ会議サービス「Zoom ミーティング」(以下、Zoom)だ。
1日の利用者が今年3月に2億人を突破。日本でも社内の会議から、取引先との商談、大人数のセミナーまで各社がZoomを取り入れた。さらには教育機関も取り入れ始め、Zoomがビデオ会議のスタンダードツールになりつつある。ブームはビジネスだけにとどまらず、オンライン上で飲み会を開く「Zoom飲み」という言葉も生んだ。
Zoomの武器は圧倒的な使い勝手の良さだ。ユーザーはアカウント登録をする必要が無く、送られてきたURLにアクセスするだけで会議に参加できる。シンプルな操作性や安定的な接続環境に、ビジネスパーソンが飛び付いた。有料版に限るが、100人が参加する大規模なセミナーを開催できる「ビデオウェビナー」機能も好評だ。
ビデオ会議を中心としたテレワーク化の流れはグッズ、部屋づくり、Wi-Fiなど様々なことを激変させる。量販店ではビデオ会議に必要不可欠なウェブカメラやヘッドセットが品切れる“Zoom売れ”現象も起きた。
今後、部屋の見栄えを良くする“Zoom映え”用インテリアなど新たな消費を生みそうだ。
ウェブカメラ
ビデオ会議特需の最たる例がウェブカメラだ。パソコンにカメラが内蔵されていないケースも多く、外付けで対応するユーザーが激増した。量販店やネットショップでは品薄の状態が続く
ヘッドセット
円滑なコミュニケーションを図るため、マイク付きのヘッドセットを買い求める人も多い。ウェブカメラと並んで、量販店のテレワークコーナーの“主役”に躍り出た。ゲーム用の高音質な製品を取り入れるユーザーも増えた
Wi-Fiルーター
ビデオ会議にはネット回線の安定性は必要不可欠だ。テレワーク化の影響で、自宅の回線速度を増強する動きがある。「3月は前月比50%増の売り上げ。平均購入単価も上がっている」(バッファロー)といい、上位機種のニーズが増えている
背景素材
アニメやゲーム業界を中心に、ビデオ会議用の背景素材を無料公開する企業が相次いでいる。ジブリや「新世紀エヴァンゲリオン」「FFVIIリメイク」など有名作品が目白押しだ。ビデオ会議の普及により、背景で遊ぶことがまず会話の糸口になるという新しい文化も出てきた。(C)カラー (C)カラー/Project Eva. (C)カラー/EVA製作委員会、(C)1997 Studio Ghibli、(C)SEGA PIXTA
注)「エヴァンゲリオン壁紙」は
サイトにて配布。「スタジオジブリ壁紙」は
サイトにて配布。「龍が如く壁紙」は同社のTwitter上にて配布
Zoom会議の基本の「キ」
シンプルで分かりやすいZoomだが、使いこなせばビデオ会議がさらに便利になる。
基本操作は簡単で、パソコン用ソフトの場合、ホーム画面には何とたった4つのボタンしかない。例えばホーム画面の「新規ミーティング」ボタンをクリックすれば、すぐさま会議が開催される。あとは開催と同時に自動生成される「URL」や「ミーティングID」「パスワード」を参加者に伝えるだけ。参加者はメールなどで届いたURLをクリックするか、Zoomソフトを起動させてミーティングIDとパスワードを入力すれば会議に加わることができる仕組みだ。
ホーム画面の「スケジュール」は、将来的な会議の予定に使う。日時や会議時間はもちろん、パスワードも任意に設定可能。「マイクロソフトアウトルック」などと連携し、スケジュール情報を手軽に登録できるのも便利だ。
Zoom人気を後押しする機能の一つが「バーチャル背景」。ビデオ会議の際、どうしても写り込んでしまう部屋の様子を任意の画像に変えることができる。設定はホーム画面の歯車マークをクリックし、「バーチャル背景」から好きな画像を選ぶだけ。ビデオ会議ではユーザーの姿以外が切り抜かれて指定した画像に変更される。背景に動画ファイルを選ぶことも可能だ。
「画面共有」もビデオ会議中に重宝する機能。会議画面のメニューにある「画面を共有」ボタンを押すとパソコン上にある任意のファイルやフォルダーが他の参加者の画面にも表示される。実際にエクセルの資料や写真などを見せながら説明できるのは非常に便利だ。
上級者なら「リモート制御」も有用。共有画面を見ている参加者がメニューから「リモート制御のリクエスト」を選択し相手が承認すれば、共有画面の操作までできてしまう。遠隔から相手のパソコンをリモートコントロールできるため、操作に困っている人のサポートなどにも使えそうだ。
実は、こうしたビデオ会議の機能は、すべて無料アカウントで使える。「参加者が3人以上の会議時間は40分まで」という制限はあるが、自動録画や自動保存までも無料で使えることは大きなメリットといえる。
Zoomはセキュリティ面での課題も指摘されているが、そうしたリスクを軽減する方法もある。過去にZoomの創業者とオンライン会議の開発に携わっていたこともある越川慎司氏(クロスリバーCEO)は「ソフトを常に最新版へアップデートし、待合室機能を使いこなすことがカギ」と話す。会議に招待した参加者を、まず「待合室」にログインさせる設定にしておき、「主催者は待合室にアクセスしている参加者の情報を必ず確認してから参加の許可を出すべき」(越川氏)。その他、ミーティングIDとパスワードを別の手段で伝えるといったことなども重要だという。
初級編::会議の招待はURLを送るだけ
他の統合型ビジネスチャットツールと比べるとZoomのインターフェースは非常にシンプルだ。会議の主催や参加はホーム画面のボタンを押すだけ。会議を設定すると共通の「専用URL」や「ミーティングID」、「パスワード」が自動発行され、それらを参加者と共有することで会議を開ける。無料版の場合、3人以上の会議は40分まで
(1)ビデオ会議を主催
ホーム画面の「新規ミーティング」ボタンを押すと会議がスタート。「参加者の管理」ボタンを押すと右に表示されるサイドパネルから「招待」を選択し、新たなメンバーを呼び込む
(2)会議のスケジュールを設定
将来のミーティングを設定するにはホーム画面の「スケジュール」を押す。日時や会議時間を入力するだけと設定は簡単。マイクロソフト アウトルックなどとの連携も可能だ
(3)IDで会議に速攻参加
会議の主催者からは上記のような招待情報が送られてくる。URLをそのままクリックするか、ZoomソフトにミーティングIDやパスワードを入力するだけで会議に参加できる仕組み
(4)スマホでも手軽に使える
スマホ版のZoomアプリでも基本的な操作はパソコン版とほぼ変わらない。スマホの場合、インとアウトの2種類のカメラを切り替えられる。ボタンをタップするとマイクがオンになる「安全運転モード」もユニーク(写真/PIXTA)
応用編:個人チャットから共有資料の編集まで
無料でも多彩な機能を使えるのがZoomの魅力だ。代表的な機能が「バーチャル背景」。カメラに映る人物だけを切り抜いて背景画像と合成する。部屋の様子を見せたくないビデオ会議などに便利だ。画面共有時に「リモート制御のリクエスト」をすれば相手のパソコンも操作できる(写真/PIXTA)
(1)個人間チャット
ビデオ会議の最中でも文字によるチャットが可能だ。通常は参加者全員に内容が公開されるが、「送信先」を「プライベート」にすることで個人間でのチャットもできる
(2)バーチャル背景
ビデオ会議で部屋の様子をマスクできる「バーチャル背景」。自分が撮影した写真を使うこともできる(写真/PIXTA)
(3)共同編集
パソコン上のウィンドウを共有もできる。設定すれば共有されているソフトを他の参加者が操作することも可能だ。同じLAN内にあるiPhoneの画面をAirPlayで共有する機能もある
(4)挙手をする
「参加者の管理」の中には「手を挙げる」ボタンがある。参加者が多くても、発言者の管理がしやすい
上級編:ウェブの「設定」で高機能に
Zoomのウェブサイトにある「マイアカウント」の「設定」でさらに機能を拡張できる。ビデオやチャットの自動保存機能は特に便利だ。画面は、ビデオ画面にテロップを表示したところ。話している内容の要約などに向く。文字のサイズは3種類から選択可能だ(写真/PIXTA)
(1)字幕を付ける
ビデオの画面にテロップを付けられる。主催者以外にも、他の参加者が文字を入力することも設定できる
(2)相手のカメラ操作
ユーザーのカメラを他の参加者が操作できる。スマホなど2つ以上のカメラがあるときに使える
(3)自動録画
会議の開始と同時に自動で録画を開始する。多くの会議を記録する場合は設定しておくと便利だ
(4)別室を作る
主催者は会議室をさらに小さな部屋に分け、限られた参加者と会議ができる。例えば個別指導などに向く
(5)チャット自動保存
会議中のチャットをすべて自動的に保存する。参加者の投稿を議事録のように残せる
※この記事を含む特集「仕事の効率をUP! テレワーク実践講座」は日経クロストレンドに掲載されています。
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