全4820文字

 そうしたオンラインセミナーを繰り返した結果、6月中旬には「物件の見学率が、昨年と同程度に戻っている」(佐藤氏)という早期の回復を果たせた。6月に入り少しずつ日常が戻る気配も見えてきたが、「イベント直前でも申し込め、気軽に自宅で参加できるため満足度が高い。このスタイルが定着していく可能性は高い」(佐藤氏)と見る。

オンライン接客も広がる

 Zoomマーケティングは「ファン醸成」に関するものが目立つが、「接客」「需要創出」に関するものも徐々に広がっている。「接客」の一例が、オンキヨー&パイオニアが20年6月1日に開始した「オンライン相談」。Webページ上で日時を指定し、問い合わせ内容を記載して申し込むと、Zoomで担当者と話ができる。東京・秋葉原のショップ兼ショールーム「ONKYO BASE」に来店できない人に向けたサービスと位置づける。

 問い合わせの内容によって、マーケティング部門、営業や技術の担当者といった社員が応対する。きっかけは新型コロナだが、「リアル店だけでなくオンラインで販売や顧客との接点を進化させる」(オンキヨー&パイオニア営業部コーポレートマーケティング課長の家倉宏太郎氏)ために、コールセンターの担当者ではなく、あえて社員が対応する仕組みにした。「軌道に乗れば、即日対応をやっていきたい。それでこそお客との距離をオンラインで縮めていけるはずだ」(家倉氏)と見込む。

 趣味人倶楽部と獺祭の取り組みのようにオンラインイベント付きで商品を販売するケースは「需要創出」の一例と言えるだろう。Zoom関連の商品を投入する動きもある。ZOZOは20年5月末、Zoomのバーチャル背景機能を生かすことで、柄を自由に変更できるTシャツ「GREENBACK TEE」の販売を開始した。「人と会わないから、出かけないから『服はいらない』ではなく、今だからこそ提示できる『ファッションの在り方』を考えて製品を開発した」(ZOZOテクノロジーズ クリエイティブディレクターの大久保真登氏)。

アプリ分析プラットフォーム「App Ape」の推計によるオンライン会議系アプリの日間利用者数(DAU)の推移。iOSとAndroidの合算

 Zoomを導入した多くの企業は「コロナ後に一気に普及し、ユーザー数が多い」ことを理由に挙げる。実際、国内でZoomはどれだけ利用されているのか。データ分析会社フラー(千葉県柏市)の推計によると、Zoomの日間利用者数(DAU)はピーク時には140万に到達したが、その後はいったん落ち着いている。フラーのアプリ分析メディア「App Ape Lab」編集長・日影耕造氏は「どのアプリが覇権を握るかはまだ見えないが、Zoomはビジネスと個人利用の両方を取り込んでいる。基本無料で利用できるなどコストが安く、録画のしやすさ、会話の聞き取りやすさにも優位性がある」と指摘する。

 Zoomのマーケティング活用はこのまま広がっていくのか。それとも新型コロナウイルスの感染拡大に伴う一時期のブームにすぎないのか。本特集では、その真価に迫る。

(写真提供/オースタンス、Housmart、オンキヨー&パイオニア、ZOZO)

※この記事を含む特集「 検証『Zoomマーケティング』の潜在力」は日経クロストレンドに掲載されています。