「殿堂入り」のトマトも
生鮮宅配のオイシックス・ラ・大地も、ネーミングに様々な工夫をしてきた。同社で長く親しまれている商品に、「ネーミング野菜」と呼ばれるものがある。「ぐるはす」「かぼっコリー」「かがやケール」「みつトマト」など、「なんだろう?」と思わせる珍しい名前の野菜が並ぶ。
「ネーミング野菜は、社内で『キラー野菜』とも呼んでいる。『ちょっと変わっていて、簡単にお召し上がりになれて、おいしい』。オイシックスのコンテンツを象徴するような商品でもある」(オイシックス・ラ・大地コーポレートコミュニケーション部広報室の横溝万保美氏)
例えば、固い皮を切ったり、柔らかくなるまでゆでたりと調理が大変そうなカボチャでも、「かぼっコリー」と名付けた品種は、生のままで食べられる。同社は、時間をかけずにおいしく楽しい食卓を実現できる「プレミアム時短」を提案しているが、そういった価値を伝えられるかどうかはネーミングでも決まる。
同社は04年から会員の口コミや投票によって生産者を表彰する「農家・オブザイヤー」を開催しているが、みつトマトは「みつ」のように甘いミニトマトとして知られ、同賞の各部門で度々受賞している。通算で2回の最高金賞も受賞し「殿堂入り」商品にも認定された。生産者の伊原努氏が同社との取引を開始してから農地面積を増やしたほどの人気だという。
ネーミングをする際には、食感やイメージとのギャップから切り口を探している。オイシックス・ラ・大地Oisix商品本部農産部のバイヤー、山下由美子氏は、「(食べたときに)『今、世の中で売っている商品とちょっと違うな』というポイントを見つけたら、そこをうまく伝える名前を考える」という。例えば、青汁の「苦い」イメージの強いケールには、あえて「かがやく」という言葉を組み合わせて印象を変えている。
通常は短い商品名でまとめるが、ECではあえて少し説明的な副題もある。ケールにも様々な品種があるため、サイト上では「炒めてもおいしい 肉厚かがやケール」や、「おいしく食べてキレイをサポート かがやケール」と、画面をスクロールした際に一目で特徴を把握でき、立ち止まってもらえるようにした。
山下氏は、毎週のように野菜産地を訪ねる。その場で良いものを見つけて試食をすることもあれば、生産者に品種開発を依頼したり、種苗会社のカタログを見て、直接足を運んで検討したりすることも。「『今日はこの野菜があるから、このご飯を作ろう』と、ポジティブな気持ちでキッチンに立てるような、家族も自分も楽しめる食材を開発していきたい」というのが山下氏の目標だ。
(写真提供/曽我農園、オイシックス・ラ・大地)
(この記事は、日経クロストレンドで7月27日に配信した記事を基に構成しました)
※この記事を含む特集「ヒットするネーミング」は日経クロストレンドに掲載されています。
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