日経クロストレンドの特集「トップ激白 スノーピークのヒット考」から、山井太会長と山井梨沙社長、父娘による本音対談をお届けする。社長交代直後に起こったコロナ禍でのドタバタから、10年後を見据えた同社の未来像まで語ってもらった。

「スノーピーク オペレーションコア HQ2」にある執務室の壁には、2019年12月に改定されたミッションステートメント「The Snow Peak Way」と「心の三か条」「行動の六か条」が書かれている。写真右が山井太会長、同左が山井梨沙社長
「スノーピーク オペレーションコア HQ2」にある執務室の壁には、2019年12月に改定されたミッションステートメント「The Snow Peak Way」と「心の三か条」「行動の六か条」が書かれている。写真右が山井太会長、同左が山井梨沙社長

コロナ禍でより強固な体制が築けた

2020年3月に社長を交代して1年がたちました。コロナ禍もありましたが、振り返ってみていかがでしょうか。

山井太会長(以下、会長) 1年を振り返ると、かわいそうだったなと思っています。社長を交代した途端にコロナ禍になって……。社内でも非常事態対策本部を作って、僕が本部長、梨沙が副本部長という役割で対応してきました。だから、社長として自分で会社をグリップできるようになったのが、たぶん、20年の7月とか8月とかじゃない?

山井梨沙社長(以下、社長) そうですね、いきなりの修羅場でした。

会長 他の会社もそうだと思うのですが、店舗やキャンプ場の休業、財務状況などを分析すると、コロナ禍ではスノーピークも倒産の確率が30%も上がったりして。そうした現状を社内で共有し、生き残るためなら何でもするぞ、って社員に伝えました。かなり荒っぽいことをしなきゃいけない状況でしたね。でも、社長が代わったからといって、いきなりそれを彼女にやらせるのも……。

社長 本当に倒産しちゃうかもしれない(笑)。

会長 (笑)。僕は嫌われても大丈夫だけど、新社長が社員に嫌われるのはよくないという思いもあって。だから、そういう意味じゃ、僕が汚れ役。資金繰りもしないといけないし、経営計画も見直さないといけない。そういった守りの施策は僕のほうで進めていました。

社長 会社の根幹のお金が尽きないように、どう対応しなきゃいけないかみたいなところは、目の前で学ばせてもらいました。そんな中で、店舗もずっと閉めていたので、長い間ユーザーとのコミュニケーションが途絶えていたのが気になっていました。そこで始めたのが、自宅待機している社員からお客さんに連絡をする施策です。これが功を奏して、EC(電子商取引)の売り上げは早い段階で戻ってきました。

会長 2人いて良かったよね、あの時。経営の機能分担ができましたから。守りの仕事をやりながら攻めの仕事はできないからね(笑)。

コロナ禍のピンチをチャンスに変えられたのは、親子2人がそれぞれの役割に集中できたから
コロナ禍のピンチをチャンスに変えられたのは、親子2人がそれぞれの役割に集中できたから

社長 オンラインを使ってエンゲージメントを上げる取り組みは前々からタスクとしてはあったのですが、後回しになっていました。それをコロナ禍のタイミングでプロジェクトチームを作って、一気に推進しました。いろんな部署からスタッフを集めて、総勢50人くらいのチーム。オンラインでの活動としては、バーチャル「焚火(たきび)トーク」で会長や私からメッセージを出させていただいたりとか、オンラインのチャットサービスを始めたりとか。あとは店舗スタッフから顧客に電話したりですね。120人くらいのスタッフ総出でやりました。

本気の度合いが伝わってきます。そこまでやっている企業はあまり聞いたことがありませんが。

会長 うちのWEBサイトはどの商品ページに、今何人アクセスしているかまで全部分かるんです。

社長 それで、クリックするとそのお客さんにつながったりできます。短期間でそこまでのシステムを社内で作り上げました。普段だったら後回しになっていた作業が、コロナ禍で一気に進められたというのは、災い転じて……ですね。

会長 お客さんたちもステイホーム期間だったので、「ホッとした」「すごく癒やされた」という声をいただきました。デジタル化は僕が社長時代から進めていましたが、2年ほど計画から遅れていたんです。でも今回、梨沙がリーダーシップを執ってくれたおかげで、その遅れを巻き返して、さらに1年くらい先まで進んでくれました(笑)。もともと、リアルな部分に強い会社なので、お客さんとのエンゲージメントはすごく強かったのですが、それがオンライン上でもできるようになりました。コロナ禍だからって悪いことばかりではないんです。

続きを読む 2/3 コロナ禍で再認識されたキャンプの魅力

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