AIカメラでマスクまで検知し、安全を「見える化」

 GPSという「上」からのアプローチに対し、店内カメラという「横」からのアプローチもある。店内に設置したAI(人工知能)カメラを活用して混雑状況を知らせるサービスの提供をいち早く始めたのが、北海道大学発のベンチャー企業AWL(アウル、東京・千代田)だ。同社の来店客分析ツール「AWL Lite」の無料オプションとして提供。「商業施設やアミューズメント施設の感染予防策として引き合いが多い」と、AWLの土田安紘CTO(最高技術責任者)。資本提携先であるサッポロドラッグストアー(サツドラ、札幌市)などが一部の店舗で導入している。

 AIカメラで来店客を検知してカウントし、平均滞在時間などを基に混雑状況を推測。「店内は混み合っていません」「店内は少し混んでいます」「店内はかなり混んでいます」といった状況を、入り口などに設置した端末の画面にリアルタイムで表示する。来店客が混雑状況を簡単に把握できるのだ。LINEなどのチャットツールやウェブなどで混雑情報を見られる機能も開発しており、これを使えば混雑具合を確認してから店に行くかどうか決められるようになる。

店内の混雑状況をタブレット端末の画面で表示
店内の混雑状況をタブレット端末の画面で表示

 このサービスは店内カメラで人を検知しているためリアルタイムで混雑状況が分かるのに加え、人以外も検知できるのが特徴だ。そこで、同社はマスクや消毒液の使用有無を検知する機能も提供する。

 マスクの着用や消毒液のポンプを押す動きを検知し、その場で画面に「ご使用ありがとうございます」「ご使用にご協力ください」などと表示。感染防止対策を促すことができる。販売スタッフが来店客に直接声をかけるよりも効率的で、お互いにストレスが少ない方法と言えるだろう。

マスク着用の有無を検知し、「マスク着用ありがとうございます」「マスク着用徹底をお願いします」と表示
マスク着用の有無を検知し、「マスク着用ありがとうございます」「マスク着用徹底をお願いします」と表示
消毒液のポンプを押す動きを検知し、「ご協力ありがとうございます」「消毒の後、入店ください」と表示
消毒液のポンプを押す動きを検知し、「ご協力ありがとうございます」「消毒の後、入店ください」と表示

 データ活用の面では、蓄積される混雑度やマスク着用率、消毒液使用率といったデータを指標に、入場制限をするなどの対策を講じることも可能だ。「このテクノロジーの最大のメリットは危険度を見える化できること」(土田CTO)。

 確かに、ウイルスが見えない以上、店内の安全性を客観的に示すことは難しい。そんななか、人が集まる場所では、安全性の条件を「混雑度」「マスク着用率」「消毒液使用率」などに設定し、そのデータの推移から安全性を可視化するというニーズは高まりそうだ。

 ただし、買い物客に見せるかどうかについては注意が必要。マスク着用の検知に関して、導入しているサツドラでは店頭画面では表示しないが、店舗側でデータとして収集して確認しているという。「導入時はマスクの流通量が少なく、店頭でマスクを売っていないのにマスクをしていないと入店できないような警告は不適切と判断し、店頭画面に表示するのは見送った」(サツドラ)。小売店側は導入にあたって、買い物客がどういう印象を受けるかも考慮する必要があるだろう。

店舗側ではダッシュボードで「混雑度」「マスク着用率」「消毒液使用率」などの推移を確認しながら対策を考えることが可能
店舗側ではダッシュボードで「混雑度」「マスク着用率」「消毒液使用率」などの推移を確認しながら対策を考えることが可能
[画像のクリックで拡大表示]

ピークカットが店舗最適化の主役に

 さらに、AWLの土田CTOは「店舗の最適化のために集客ピークの緩和が有効という認識はあったが、混雑や行列=繁盛店というイメージが大きな壁になっていた。3密回避でピークカットが店舗最適化の主役として進化していくのではないか」という。

 小売店側の意識も、安全の見える化に向かっている。「当面は外出自粛と緩和を繰り返していくと推測されるなか、安心安全な場所を選ぶという考えはリテールだけではなく、すべてのサービス業でクローズアップされてくるだろう」(サツドラホールディングスの富山浩樹社長)。店舗のデジタル化ソリューションは転換点を迎えているようだ。

※この記事は日経クロストレンドの特集「 コロナショックで進むDX」に掲載されています。

この記事はシリーズ「日経クロストレンド」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。