桜木町にワークマン?

 これまで例に挙げたのは、いずれもワークマンプラス的な専門店を第2弾、第3弾と展開していくというアイデアだった。既存の戦略の延長線上にある。一方で、これとは別に、世の中にない全く存在しない店をつくるというプロジェクトも進行している。

 舞台は、JR桜木町駅前。言わずとしれた港町横浜を代表するターミナル駅であり、ワークマンの中ではかなり都心型の店舗となる。みなとみらいへと通じる方面に出店用地を抑えてあり、駅を挟んで反対側には野毛という横浜最大の飲み屋街が広がる。立地は抜群だ。「桜木町は名前もいいから、何をやってもいい」(土屋氏)。それだけに、かなり思い切った試みをする。

 それが、物販と情報発信を両立させ、かつ動画映えもするという「コネクテッドストア」だという。「静止画はもう古い。ユーチューブが全盛期を迎え、インスタ(インスタグラム)投稿も動画になってきた。ユーチューブをずっと見ていると、テレビよりも面白いと分かってきた」(土屋氏)。

 店内の随所にユニークな仕掛けを施し、商品を買うだけではなく、ハッシュタグをつけて動画と共につぶやきたくなるような、そんな世界観を常設店舗で表現する。

 「原宿でインスタ映えを狙った2週間限定のポップアップストアはあるかもしれないが、それを常設でできないのか、と。例えば、試着室をインスタルームにして、鏡も動いて取り外せるようにするとか。そもそも動画映えするディスプレーを置くとか。より進化した変身店舗を見せたい」(土屋氏)

 ワークマンが、こうした実験店舗を出そうとするのには理由がある。ワークマンプラスの大ヒットにより、女性客は目に見えて増えた。「ワークマンが(ファッション誌の)『CanCam』に取り上げられるなんて、今までなら考えられなかった。それでも、まだ20、30代の利用客は少ない」(土屋氏)。空白世代を狙い撃ちするため、売り場の見せ方を最大級にとがらせ、さらに、ワークマン公認のアンバサダーも投入する。

 アンバサダーがマネキンをコーディネートしたり、店内のポップをデザインしたりと、店づくりに全面協力し、インスタやユーチューブ、ブログなどでも積極的に発信してもらう。「彼女らの写真を、店のパネルにしちゃうとか。ワークマン関連のインスタが上がると、リアルタイムでその画像が表示されるというのもいいかもしれない。とにかく、コネクテッド(=つながる)という要素を入れたい」(土屋氏)。

 単に、奇をてらった見せ方ではいけない。「もちろん、最高に売れなきゃいけない。売り上げでも、ナンバーワン店をつくる」と土屋氏は語る。自らが今、一番やりたいことと断言するアンバサダーマーケティングの力を、この実店舗で存分に見せつけるつもりだ。

※この記事は日経クロストレンドの「 インサイド」に掲載されています。

発売直後に3刷!好評発売中!

 既存店と同じ商品を扱いながら、売り方を変えただけで2倍売れた衝撃の新業態「ワークマンプラス」誕生から2年近く。消費増税も、新型コロナ禍も物ともせず、2桁成長を続けるワークマンの強さの秘密に迫りました。

 主人公は、商社からやってきた1人の男。作業服専門店が、なぜ今をときめくアパレルショップになれたのか。客層を大きく拡大できたのはなぜなのか。実は水面下で、緻密かつ計算され尽くした戦略がありました。組織が躍動し、変わっていく姿を、物語仕立てで克明に描写。全編コロナ後書下ろしで本邦初公開の情報を余すことなく盛り込みました。

 ワークマンは新型コロナにどう立ち向かったのか。アフターコロナで何を仕掛けるのか。本書を読めばすべて分かります。危機の時代にリーダーとはどうあるべきか、DX(デジタルトランスフォーメーション)実現のヒントから、成果を出すチームづくりの極意まで、さまざまな気づきを得られる一冊です!

この記事はシリーズ「日経クロストレンド」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。