――社長就任後すぐ、新型コロナウイルスの感染が拡大し、市場が大きく様変わりました。この1年半を振り返っていかがですか。
及川美紀氏(以下、及川) 正直に言うと、記憶がないくらい、次から次へと色々なことが起きました。想定外のことが起きることを想定しないと動けないということが続いて、決断を迫られましたね。一番に考えていたのは事業を継続することです。
従業員の雇用とビジネスパートナーの商売をいかに守るか。守るだけでなく、変えるべきことは何か。それは、自分一人では絶対に考えられないことです。社内外の色々な人とディスカッションをしました。化粧品会社以外の、もっと大きな影響を受けている業界の人たちとも議論をし、彼らが次の一手をどう打っているかを聞くうちに、少しずつ答えが見てきました。
大きかったのは、やはりオンライン化に舵を切ったことです。これまでのイベントやエステのトライアルなど、新規のお客様に来ていただいた手段が使えなくなり、各事業部の社員、そして全国の約3800店のビジネスパートナーがオンラインに活路を見いだしてくれました。Zoomでミーティングする環境を短期間で整備し、20年7月の段階で、約900のショップでオンラインカウンセリングやワークショップができるようになりました。
実は20年の予定だった東京五輪・パラリンピックに向けて、社員のリモートワークの準備はしていたんです。とはいえ、オンラインでできるメニューはもっと増やした方がよかったし、インフラ面も不足していましたね。やってみて気付きました。ポジティブな気付きとしては、10代から90代までのビジネスパートナーたちが、すんなりZoomでのミーティングや接客に慣れてくださったことです。「実際に会わないと」という意見はもちろん出るんですが、それよりも「これで会えるのもいい」と、皆さん前向きに取り組んでくださった。
とはいえ、業績面では厳しいです。特に20年4月、5月はエステも閉めざるを得ず、ビジネスパートナーにも負担をかけています。その後、保健所などと相談しつつ、感染防止しながらエステ業を続けることもできるようになりました。
――商品戦略での挑戦とは。
及川 20年4月、5月は、もともと夏に予定されていた「B.A(ビーエー)」のリニューアル販売を本当にやるのか、ということを最終決断するときでした。百貨店でのタッチアップ(販売員が客の肌に直接テスターを付けるなどの接客)はできない、お客様のマインドは冷えている、インバウンドも無い。本当にこの状況で、ローションが1本2万円する高級化粧品を発売すべきかどうか。
ブランドマネジャーやPRのメンバーとも、様々なディスカッションをしました。そこで一致したのが、「この商品を今、出したい」ということ。今だからこそ、世の中をポジティブにするニュースを作りたいと思ったんです。
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