――商品の提案から商品化までは、どういったプロセスでしょうか。

 アイデアやニーズに沿って商品企画をする事業部門と、それを製品化する開発部門とがあります。全部署を含めて消費者の不満がどこにあるのかを一旦精査した上で、不満に対する課題解決のアイデア出しを事業部門と開発部門でそれぞれ行います。その後、両部門で技術的な課題などをブレスト形式でブラッシュアップし、形になったら経営陣の前でプレゼンをします。

毎週月曜日のプレゼン会議の場で経営陣の決裁をとる(写真提供/アイリスオーヤマ)
毎週月曜日のプレゼン会議の場で経営陣の決裁をとる(写真提供/アイリスオーヤマ)

 プレゼン会議は毎週月曜9時40分~17時です。ここで経営陣の決裁を得るまで早ければ1カ月かかりません。出たアイデアに対して、早い段階で色々な部署を巻き込んでチェックし、手戻りがないようにスピード感を持って動く。これを重視しています。

 また、製品化のゴーサインがかかった後も、開発の初期段階で「デザインレビュー」というミーティングの場を持ち、オンライン担当、品質管理、開発担当など全部署の代表が製品に対して一斉にアクションしていきます。

 一般的なメーカーの場合、企画、開発、生産、品質管理、営業、販売とリレー方式で製品化が進むと思いますが、当社は色々な部門が伴走する「伴走型」をとっています。部門の垣根がないのも当社の強みです。伴走型のメリットは、短期間で効率的にアイデアを製品化できることだけではありません。1つのセクションやカテゴリーで生まれたアイデアが別のカテゴリーに転用できたり技術開発のフュージョンがあったりします。

――売れる製品を作る秘訣は?

 ひと言では言いにくいですが、他の家電メーカーとの一番の違いは、消費者の不満にフォーカスし、その解消を目的に商品を開発している点です。当社の中でよく言うのが「引き算開発」です。本当にお客様に必要でない機能は間引いて、その分値ごろな価格設定に反映するというDNAが受け継がれています。

 他の家電メーカーであれば、価値に見合った機能、価格に見合った価値があれば恐らく市場にローンチされることがあると思います。一方、当社はたとえ機能に見合った適切な価格とお客様に認識されるとしても、フォーカスした不満の解消につながらなければ除外して、製品価格に反映します。その結果、プライスラインが他社よりも下がっていると言えます。

――不満はどのように掘り起こしていますか。

 これも他社とは違うポイントになると思いますが、定量的なデータや消費者調査よりも社員一人一人ないしは商品開発者の生活シーンでの実体験に重きを置いています。というのも、アンケート調査では、聞かれたら答えるといった状態ですので、なかなか「本当に感じていること」は拾えません。これがデータマーケティングの1つのネックだと思っています。

 それに対して、社員が自分自身の不満として感じていることなら深層的なインサイトを掘り起こすことができる。これが当社の特徴であり、結果として商品の支持につながっています。社内には、社員が立ったままミーティングできるスペースが多いのですが、これも、互いの声を聞く場を創出する1つです。あまりデータに惑わされないですね。

 例えば、当社には社員全員が閲覧できる「ICジャーナル」という日報があります。パソコンやスマホで、1万人以上の社員が毎日入力するのですが、ここに日々の業務や生活シーンで見いだしたニーズ、お客様の生の声やそれに対するアクションなどを記入することになっています。このICジャーナルが重要な情報共有ツールとなり、社内マーケティングに役立っています。

 売れ行きの伸びない商品に対しても、このICジャーナルが改良のヒントの1つとなって後のヒットにつながる場合もあります。各セクションのプロジェクトリーダーが1単品ごとのビジネスをチェックしているので、売れなければ、まず対策を立てます。営業戦略やWeb営業と連携して価格戦略の見直しをする。あるいは機能に対するお客様の不満がないかをリサーチします。つまり、売れなかった理由を分析し、ほとんどの製品で改良を重ねます。

 1例を挙げると、部屋干しをする生活者が増える中で開発した温風の出る衣類乾燥機は、当初なかなか売れませんでした。ですが、コロナ禍で空気を循環させるニーズが高まったことを受け、サーキュレーター機能を使ってより効率的に衣類を乾かす「サーキュレーター衣類乾燥除湿機」に改良し、大ヒットにつながりました。

 このように、当社の商品には社会の変化、ニーズの変化を敏感に察知し、タイムリーに共有する仕組みが生きています。


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(この記事は、日経クロストレンドで6月29日に配信した記事を基に構成しました)

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