楽しげなデザインが購入につながる

 BOTCHANを販売するアンド・コスメの母体は、大阪市で霊園プロデュース業を営む墓石メーカーだ。アンド・コスメ専務の加登愛子氏は、「化粧品業界では素人同然だったからこそ、枠にはまらないコスメづくりができた」と話す。

 例えば、通常のコスメでは、最初にブランドカラーを決めて、その色に沿って展開していくことが多い。カラーを制限することでブランドとしての統一感が生まれるからだ。従来の常識にとらわれていたら、BOTCHANのカラフルなデザインは生まれなかっただろう。

 パッケージデザインでこだわったのは、楽しく使えるコスメにしたいから。「男性の中には、洗顔などの身だしなみを『必要だから嫌々やっている』という人も多かった。そんな男性たちが、楽しくスキンケアをできるパッケージにしたかった」(福岡氏)。洗面台に並んでいるだけで心が躍り、使用するたびに楽しくなるような商品を目指した。

 楽しげなパッケージデザインは、購入のハードルを下げることもできた。メンズコスメはここ数年で一気にメジャーになったが、「男性の自分がコスメを購入するのは恥ずかしい」と考え、購入に踏み切れなかった人もいるだろう。しかし、百貨店などの店頭でBOTCHANを見つけ、家族や友人、恋人と話題にすることで、自然と購入できる空気がつくられていったという。

 商品を並べたときにかわいく見えるのは、BOTCHANの大きな強みだ。そろえて並べたいという理由で、洗顔フォーム、化粧水、美容乳液をセット購入してくれる人が多い。ほかのメンズコスメブランドでは、洗顔フォームと化粧水だけを購入する人が多く、美容乳液まで購入する人は少ないという。20年3月からコスメのサブスクリプションサービスを開始しているが、そこでも9割以上の人が洗顔フォーム、化粧水、美容乳液の3点セットを購入している。

 時代は「美容は女性がするもの」といった固定観念が通じなくなってきた。こうしたジェンダーレスな感覚は今後、より広いジャンルに影響を及ぼすと考えたほうがいいだろう。

BOTCHANは、ギフト需要も大きい。定期的にユニークなプロモーションもしている。20年11月に販売したウインターホリデーギフト「BOTCHAN 冬のHANABI」では、筒井時正玩具花火製造所(福岡県みやま市)の線香花火と、バーチャルで楽しめる「オンライン花火」を用意した。コロナ禍の中、家族や恋人と自宅で過ごす時間をより大切にできる商品にした
BOTCHANは、ギフト需要も大きい。定期的にユニークなプロモーションもしている。20年11月に販売したウインターホリデーギフト「BOTCHAN 冬のHANABI」では、筒井時正玩具花火製造所(福岡県みやま市)の線香花火と、バーチャルで楽しめる「オンライン花火」を用意した。コロナ禍の中、家族や恋人と自宅で過ごす時間をより大切にできる商品にした
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トラベル用のスキンケアとして、ボッチャン バックパッカーセット(3850円)もある。洗顔、化粧水、美容乳液、スキンパーフェクターの4点が約1週間分入っていて、初めてBOTCHANを使用する人にも向いている
トラベル用のスキンケアとして、ボッチャン バックパッカーセット(3850円)もある。洗顔、化粧水、美容乳液、スキンパーフェクターの4点が約1週間分入っていて、初めてBOTCHANを使用する人にも向いている
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(写真提供/アンド・コスメ)

(この記事は、日経クロストレンドで3月29日に配信した記事を基に構成しました)

※この記事を含む特集「ジェンダーレスでヒットを狙え」は日経クロストレンドに掲載されています。

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