「外来品の男性用フレグランス市場では、ムスクが入った男性らしい香りが当たり前だった。しかし、こうした香りを身にまとうことに違和感を覚える男性もいた。そんな男性の中には、女性用フレグランスを自分らしく身にまとっているような人もいて、繊細男子はそういった既存のジェンダー観にとらわれない人をイメージした」(福岡氏)
BOTCHAN では、性は「男性」「女性」と簡単に2分割できるものではなく、グラデーションのように捉えることができるのではないかと考えている。「繊細男子」は女性性に近い位置にいる男性のこと。また、男性性に近い位置にいる女性も繊細男子の範疇(はんちゅう)に入るだろう。
ブランド名は、夏目漱石の小説『坊っちゃん』の主人公に由来する。坊っちゃんも、当時の社会規範にあらがい、自分の個性を模索しながら大人になったという解釈だ。ブランドの考える「繊細男子」のイメージにぴったりだと感じた。
「当初のBOTCHANでは、性別を超えるという意味で『BEYOND THE GENDER』というメッセージを考えていた。しかし、LGBTQ(性的少数者)の方と話した際、『メンズコスメをつくるなら、性別の壁は越えてはいない』と指摘され、ハッとした。そこで『LOOK BEYOND.』という現在のメッセージを考えた。性別のグラデーションで、女性性に近い位置にいる男性が、壁の向こう(女性性)をのぞき込んでいるイメージがLOOK BEYOND.」(福岡氏)。女性がユーザーの場合は、女性の位置から男性性をのぞいているようなイメージだという。
こうした特徴は女性にも受け入れられた。BOTCHANの購入者の約5割が女性だという。性別に関係なく使用できるコスメといえば、男女兼用のユニセックスコスメや、パートナー同士でシェアして使用するシェアドコスメなどもある。
福岡氏は、「BOTCHANのコンセプトをユニセックスコスメやシェアドコスメとして開発スタートしていたら、今とは全く違う、ニュートラルで優しいデザインの商品になっていたはず」と話す。
BOTCHANの開発プロジェクトがスタートしたのは14年。当時、女性用の化粧品市場はすでに成熟しており、後発メーカーが参入するのは難しかった。一方で、メンズコスメ市場はニッチで、これから伸びそうな予感があった。そんなニッチな市場の中でさらにターゲットを絞った結果が「繊細男子」だったという。
福岡氏たちは繊細男子について深掘りするうちに、LGBTQの人たちの中に繊細男子に非常に近い感性の持ち主がいると考えるようになった。LGBTQの人たちの意見を確かめたいと思い、「既存のコスメに満足している?」「こんなブランドはどう思う?」などの質問を投げかけていった。
BOTCHANのデザインにも、LGBTQの多様性を応援するためのメッセージをさりげなく埋め込んでいる。6商品を並べると虹色に見え、未開封商品を表すバージンシールも虹色だ。
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