コロナ禍で急成長した業態がネットスーパーだ。従来は店舗の補完にすぎなかったが、販売チャネルの主役に躍り出る機運が高まっている。ネットスーパーは長らく「もうからないビジネス」といわれてきた。その常識を覆したのが、三重県鈴鹿市のスーパーサンシだ。同社のネットスーパーは既に黒字化しており、多い日は売上高の4割をネット経由の注文が占める。米ウォルマートが2020年にようやくたどり着いた事業モデルを、スーパーサンシは既に実現している。その驚異の仕組みを紹介しよう。

(写真/Shutterstock)
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 米国小売りの巨人ウォルマートは、コロナ禍で最も成功した企業と業界で称賛されている。「BOPIS(Buy Online Pick-up In Storeの頭文字を取った造語)」と呼ばれる取り組みがその理由。端的に言えばネットで注文、店舗で受け取りというサービスを意味する。受け取り方法は大きく2つある。1つはロッカーを活用する方法。もう1つはドライブスルー型だ。

 その利点は配送コストの低減にある。ネットスーパーにとって、最大のコストは配送に関わる作業だ。従来の店舗事業は顧客が来店して自ら商品を手に取り、会計後に袋に詰めて、持ち帰るセルフサービス型。一方、ネットスーパーは、この一連の購買プロセスにかかるコストをすべて企業側が負担することになる。受注後に店員が商品を棚から集め、箱に詰めて配送すれば、人件費や配送コストがかかり利益を圧迫する。ネットスーパーが「もうからない」といわれがちなゆえんでもある。ウォルマートはBOPISによって自宅まで届ける配送費を不要にしたわけだ。これだけでもコストを大きく圧縮できる。

 このウォルマートに先駆けて、ネットスーパーで利益を生み出す仕組みを実現している企業がある。それも日本国内でだ。その名は三重県で食品スーパー13店舗を展開するスーパーサンシ(三重県鈴鹿市)。同社はインターネットの登場前から宅配の事業化に取り組んできた。宅配事業でいち早く収益を上げられるモデルを構築。ネットやスマートフォンの普及とともに成長を加速させた。

 スーパーサンシは地場に根付いた強力な顧客基盤をネット上に築いている。だからこそ、広告宣伝も必要ない。同社はこのコロナ禍において、なんと紙のチラシをやめるという決断をした。それにもかかわらず、20年12月の売上高が前年同月比12%増、21年1月は同8%増、21年2月は同11%増と前年を上回り続けている。押し上げているのがネットスーパー事業だ。同社のネットスーパー事業が売上高に占める比率は20%超。雨天など、需要が多い日は4割に達することもある。

 その収益モデルは、数えきれないほどの失敗の上に成り立っている。「トータルで100億円以上は捨ててきた。失敗と改善を繰り返し、成功の道を見つけてきた」(スーパーサンシの高倉照和常務)。スーパーサンシが編み出した利益が出るネットスーパーの事業モデルには「5つの成功条件」がある。

スーパーサンシが編み出したネットスーパーを成功させる5つの条件
スーパーサンシが編み出したネットスーパーを成功させる5つの条件
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ネットスーパーが成功する5つの条件

 まず前提として理解したいのは「リアル店舗のスーパーとネットスーパーは全く異なる業種。同じなのは取り扱う商品だけ」(高倉氏)という点だ。そこから導き出される1つ目の成功条件は「ネットスーパーを店舗の延長線と捉えない」こと。「そうした考えで展開するとまず失敗する」と高倉氏は断言する。

 リアル店舗は固定費のビジネス。店舗にかかる固定費は売り上げとは相関しない。そのため、とにかく集客して固定費に対するコスト効率を高めれば利益が増える。一方、ネットスーパーは売れるほど配送コストなどが高まる変動費型のビジネス。収益が赤字の構造では客数を増やすほど損失が大きくなる。

 ここで、ネットスーパーのコスト構造を考えてみよう。Webサイトやアプリの運営コストをリアル店舗営業のコストと考えれば、前者の方がコストはかからない。設備投資も少ない。商品原価は店舗とネットで同価格で販売するのであれば条件は同じ。明確な違いは配送コストの負担だ。「ネットスーパーは受注と配送に過剰に負荷がかかっている」と高倉氏は説明する。これをいかに下げられるかが、ネットスーパーの利益を生み出す最大のポイントになる。

 高倉氏がたどり着いたのは、2つ目の条件「自社で配送網を構築する」という結論だった。配送コストはアルバイトの時給を、1時間当たりの配送件数で割れば単価が出る。時給1200円で10件なら120円、これにガソリン代や配送容器などを加えた額が1件当たりのコストとなる。ところが「委託をすると、安いところでも700円程度かかる。当社は利益率が5%のため、その時点で利益がひっくり返って赤字になる」(高倉氏)。

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