そこで必要となるのは、「DXで買い物体験だけを解決するのではなく、川上から川下までリテール全体を最適化する」(永田氏)という考え方だ。利便性を高めて来店客数の向上を狙うだけでなく、AIカメラの分析で欠品を迅速に把握して在庫回転数を上げるほか、カートにレコメンドやクーポンを表示するなど企業のマーケティングにも活用する。

タッチパネルが付いたカートを使って、来店客はレジを通さずに決済ができる
タッチパネルが付いたカートを使って、来店客はレジを通さずに決済ができる

小手先の無人化は意味がない

 実際、トライアルの調査ではスマートストアでの欠品を13%削減し、生鮮カテゴリーで売り上げを12.2%高めたという結果が出ている。飲み物の棚の分析では、顧客の目に付きやすいゴールデンゾーンと呼ばれる位置に「新製品を置くよりも緑茶などの定番商品を置く方が棚の回転効率が高まる」(永田氏)ことが分かってきた。そうした知見をメーカーにフィードバックする。「新型コロナウイルス感染症の流行によって、売り上げの対前年比分析が意味をなさなくなった。その中で、先週末はどうだったかなど、いかに売り場のデータを早く取得できるかが重要になる」と永田氏は見ている。

 最終的には無人店舗を目指していくものの、「今ある技術を使って小手先でちょっと無人化しようとしても、簡単に覆される」と永田氏は話す。そう考える背景には、18年に福岡県大野城市で実施した夜間無人化の取り組みの教訓がある。専用アプリで商品の読み取りや決済ができる仕組みを整えたが、アプリのダウンロードがうまくできない人から「なぜ入れないのか」という問い合わせが相次いだ。その対応のために、結局は入り口にスタッフが常駐し、操作を教える必要があった。

 21年内にはスマートショッピングカートが61店舗のトライアルで稼働する予定。「自動運転のレベル5を実現するには、データのやり取りと分析をする周辺環境を整える必要がある。リテールも同じ」(永田氏)。来店客が3密を避けられるという利便性だけでなく、店舗とメーカーをつなぐデータ流通網を構築する。そのデータを生産管理やマーケティングに生かし、フードロスの廃棄も削減する。そうした全体の仕組みを構築することで、結果として来店客に安く商品を提供し、還元する。

 無人店舗は一時的なブームに終わるのか。ポストコロナ時代にも続くリテールの新形態として定着するのか。本特集「無人店舗/自動接客の虚実」では、複数の店舗事例から無人店舗の本質を探る。

(写真提供/TOUCH TO GO、Retail AI)

(この記事は、日経クロストレンドで2月22日に配信した記事を基に構成しました)

※この記事を含む特集「無人店舗/自動接客の虚実」は日経クロストレンドに掲載されています。

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