20年3月に開業したJR山手線の新駅、高輪ゲートウェイの構内に無人コンビニ「TOUCH TO GO」がある。天井から下げた複数のカメラが来店客の姿を捉え、どの商品を手に取ったかをAI(人工知能)で分析する。セルフレジの前に立つと、購入金額が表示し、交通系ICカードで決済する。「国内で実証実験ではなく、公共の場で営業している無人店舗を形にできているのは我々だけ」。そう話すのは、同店を手掛けるTOUCH TO GO(タッチトゥゴー、東京・港)の阿久津智紀社長だ。

高輪ゲートウェイの店舗に続いて、20年10月にはJR山手線の目白駅に紀ノ国屋の無人店「KINOKUNIYA Sutto(キノクニヤ スット)」を開店した
高輪ゲートウェイの店舗に続いて、20年10月にはJR山手線の目白駅に紀ノ国屋の無人店「KINOKUNIYA Sutto(キノクニヤ スット)」を開店した

開店後の1~2カ月は黒字化を達成

 店内にはスタッフの姿はない。レジ打ちの作業は機械に任せ、バックヤードの店員1人が、品出しや商品発注、日報や月報を出すといった作業をする。「アルバイト1人でオペレーションを回す仕組みの改善を続け、自信がついた」(阿久津氏)と評価する。一般的なコンビニで働く3人の店員を1人に減らすと考えたとき、アルバイトの時給を1100円として、月に1人分の人件費50万~80万円のコスト削減効果が期待できるという。

 同社が狙う無人店舗の市場は、自動販売機と店舗の中間に位置するマイクロマーケットだ。例えば、病院内の売店。新型コロナウイルスの感染リスクがある中でも、医療従事者が軽食を買う、患者の家族が必需品を買うという場所を維持する必要がある。高速道路のサービスエリアや、大型の団地といった場所でも需要がある。

 高輪ゲートウェイの店舗は、開店後には日々行列ができるほどの注目が集まり「開店から1~2カ月は黒字だった」(阿久津氏)が、その後は新型コロナの影響で「トントンとちょっと」(同氏)という状況が続いている。そうした中で目指すのはさらなるコスト削減だ。

注文と決済を無人化できるタッチパネル端末「TTG-MONSTAR(モンスター)」の提供も開始した
注文と決済を無人化できるタッチパネル端末「TTG-MONSTAR(モンスター)」の提供も開始した
TOUCH TO GOの阿久津智紀社長
TOUCH TO GOの阿久津智紀社長

 今後は無人店舗の数を増やし、システムの量産によるコスト減を狙う。これまでは23年度に地方を含み100店舗、24年に200店舗という目標を立てていたが「1年前倒しをしたい」と阿久津氏は意気込む。20年10月には、JR山手線の目白駅に高級スーパー紀ノ国屋の無人店「KINOKUNIYA Sutto(キノクニヤ スット)」を開店した。高輪ゲートウェイの店舗と同様の仕組みで無人決済ができる。

 20年11月からは、注文と決済を無人化できるタッチパネル端末「TTG-MONSTAR(モンスター)」の提供を開始した。システム利用料は1台3万5000円からと低価格で、ハンバーガーショップ「R・ベッカーズ 田町店」や「GALA湯沢スキー場」が導入している。

デジタル施策「1%上がればすごい方」

 「デジタル化をして、実験で面白いデータがどれだけあっても、マネタイジングができないのであれば意味がない」。そう話すのは、トライアルグループのAIソリューション会社、Retail AI(東京・港)の永田洋幸社長だ。

 トライアルカンパニー(福岡市)は、決済ができるタブレット端末を備えたショッピングカートやAIカメラを導入したスマートストアを全国で約30店舗を展開。20年7月には、関東で初めてのスマートストアとして、千葉市内に「スーパーセンタートライアル長沼店」をオープンしている。

スマートストア化した「スーパーセンタートライアル長沼店」(写真/志田彩香)
スマートストア化した「スーパーセンタートライアル長沼店」(写真/志田彩香)

 新たなデジタル施策を導入しても「売り上げが1%上がればすごい方」だと永田氏は分析する。例えば年商20億円の店舗でデジタル施策によって、1%にあたる2000万円の売り上げ向上が見込めたとしても「大抵の小売業の利益率は2%ほど。そうなると利益の寄与は40万円」(永田氏)とシビアに見る。

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