新型コロナウイルス感染症が拡大する中、店員と顧客との過剰な接触を避けるため、店舗の無人化や自動接客に向けた取り組みが加速している。闇雲に無人化を進めても、有人の店舗を上回る利便性を提供できるとは限らない。先進企業の取り組みから見えてきた無人店舗/自動接客の虚実と明暗を探る。

東京都中央区の無人コンビニをコンセプトとした「ロボットマート」。この他に福岡市の博多マルイでも出店している
東京都中央区の無人コンビニをコンセプトとした「ロボットマート」。この他に福岡市の博多マルイでも出店している

 外観はコンビニエンスストアと変わらないが、自動ドアから中に入ると普通の店ではないことが分かる。「いらっしゃいませ」「体温測定をしましょう。近づいてカメラを見てね」。そんな声をかけながら出迎えてくれるのは、店内のロボットたちだ。JR京葉線や東京メトロ日比谷線の八丁堀駅出口から徒歩1分の位置にあるビル1階。2020年11月にオープンした「ロボットマート」だ。

 棚にはお菓子や飲み物、缶詰やレトルト食品が並ぶ。それらの商品をレジに持っていき、所定の場所に置くと、パッケージの映像をシステムが自動認識する。来店客が画面に表示された支払いの総額を確認したら、クレジットカードや電子マネー、モバイル決済で支払う。

ロボットマートの店内。中国メーカーが開発した案内ロボが出迎える。一般のコンビニと差異化するため、奥の棚にはお菓子や缶詰、飲み物など全国ローカルの食品が並んでいる
ロボットマートの店内。中国メーカーが開発した案内ロボが出迎える。一般のコンビニと差異化するため、奥の棚にはお菓子や缶詰、飲み物など全国ローカルの食品が並んでいる

 「玄関の横にある手をたたく赤いロボットが子供に人気なんですよ。子供とロボットが触れ合いつつ、商品にも興味を持ってもらえたら」と話すのは、店舗を運営するロボットセキュリティポリス(東京・港)の三塚剛社長だ。関連会社で三塚氏が同じく社長を務めるモスペン研究所(東京・中央)は、ビラや試供品配りを支援するためのマーケティングロボット「モスペンくん」を開発してきた。

 かつて中国の深センに出張した三塚氏は、現地で多数登場した無人コンビニを見て感銘を受ける。「日本で一番を狙う」と、ロボットマートの1号店を18年9月に東京・日本橋に開いた。完全無人の店舗として運営してきたが、課題も見えてきた。「完全な無人でも運営できるが、無機質感がある。レジのカウンターに置いたときに画像認証がうまくいかないときなど、困ったら人に聞きたいという顧客の要望にも応える必要があった」(三塚氏)

ロボットマートで決済をしているところ。商品をカウンターの上に置くとパッケージを画像認識して料金を示す
ロボットマートで決済をしているところ。商品をカウンターの上に置くとパッケージを画像認識して料金を示す

 そこでリニューアルした現在の店舗では、サポート店員が常駐している。将来的にはその役割をロボットに担わせる考えだ。「『あの商品ありますか』と気軽に聞けて、店を出るときに『ありがとうございました』と声をかけてくれることがお客にとっては大事。その役割をロボットで実現していく」と三塚氏は語る。

 コールセンターを設け、そこからスタッフがネット越しに複数店舗のロボットに接続することで接客をしたり、問い合わせに答えたりする構想を立てている。「日本人は2次元のキャラクターを好む。デジタルサイネージの画面にバーチャルYouTuberのような店員を表示してリモート接客する可能性もある」(三塚氏)と見る。

「無人化ですべて解決」とはならない

 withコロナの中で、店員と来店客の密を防ぐ新たな店舗の形が求められている。そうした中で注目を集めているのが無人店舗だ。店舗にとっては深刻化する人手不足を補うことができ、来店客には素早く便利に買い物ができるという利便性を提供できる。ただ、先行する店舗からは、無人化によってすべての課題が解決できるわけではないという現実も見えてきた。

 例えば、「話題性が高く人が集まる」「専用アプリを使って決済ができるなどOMO(オンラインとオフラインの融合)が実現できる」「低コスト化ができる」といった理想を抱きがちだが、実際はそう簡単ではない。こうした無人店舗の3つの虚実が入り混じり、一時期は無人コンビニが乱立した中国でも閉店が相次いでいる。特に持続可能なビジネスを生み出すうえで重要なのは、「低コスト化」の課題だ。

無人店舗にまつわる3つの虚実
無人店舗にまつわる3つの虚実
無人化ですべての課題が簡単に解決できるわけではない。取材で聞いた無人店舗にまつわる虚実をまとめた
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