20~30代は、他の世代に比べて持ち家ではなく賃貸が多い層。特に20代で子供がいなければ、非常に身軽に移り住むことが可能だ。「完全にテレワーク体制になっているスタートアップ企業などでは、20代の方が多く働いていることが多い。こういった若い層が賃貸から賃貸へというイメージで、家賃や生活費が安いエリアへの移住希望と答えた人が多かったのではないか」と井出氏は推測する。
実際の20代、30代の声をいくつか紹介しよう。「人混みにうんざりしていて、もともと好きな環境ではなかった。結婚し、妻の仕事の都合上仕方なく家賃の高い23区内に住んでいるが、タイミングを見て引っ越ししたい」(30歳男性)、「子供が生まれ、今の家が手狭になったので、今と同じくらいの家賃でより広い家を借りたいため」(30歳女性)。
一方、40~50代は30代と逆で、「中長期的に地方に移り住みたい」のみが平均を上回る結果に。これはリタイア後を見据えた答えと推測できる。特に50代は、郊外への移住願望はいずれもかなり低いというのも興味深い。
「コロナがきっかけ」は1000人中49人
アンケートではさらに、これらの移住願望が以前からあったものなのか、それともコロナ後に芽生えたものなのかについても質問した。すると、「コロナ前から移住希望があり、コロナは関係なく検討している」と回答した人が63人と一番多く、「コロナ前から移住希望があり、コロナをきっかけに希望がさらに強まった」が32人、「コロナ前は移住希望は特になく、コロナをきっかけに移住希望を持つようになった」が17人だった。「コロナ後」に何らかの心理的な変化があった回答者は1000人中49人。5%程度だったということになる。
実際の声をいくつか拾ってみよう。「在宅で仕事ができるので、生活費も人口密度も高い23区内に住まなくてもよい。でも自家用車必須の地方はコストが高そうなので、公共交通機関の充実している郊外に住みたい」(32歳女性)、「在宅勤務が可能になるなら、家賃が高い都内に住む理由がない」(26歳女性)、「テレワークできる仕事なので、23区内じゃなく多摩エリアでもいいかと思うようになった」(36歳男性)と、新型コロナによって経験したリモートワークが、移住を検討する大きな要因になっていると考えられる。
井出氏は「新型コロナで行動変容できる人は、生活に余裕のある人か、選択を間違えても挽回できる若い人」と分析する。「例えば社長が交代することで、その会社のリモートワークが解除されてしまう、などの不確定要素があると、住居を動かすというのは怖くてできない。リモートワークが会社の制度になるなどのレベルでなければ、動けないというのが本音なのではないか」(井出氏)。
では、具体的な移住先はどこを希望しているのか。「郊外」「郊外の最寄り駅」「地方」のそれぞれを5カ所ずつ、フリーアンサーで回答してもらった。本特集「移り住みたい街ランキング」第2回では、それぞれのランキングを紹介していく。
調査委託先 クロス・マーケティング
調査期間 2021年1月29日~2月1日
調査方法 クロス・マーケティングが構築するモニターパネルの中から「東京23区在住者」および「フルタイム勤務者(パート・アルバイト除く)」を条件にスクリーニングし、アンケートを依頼
有効回答者数 1000人
回答者の性・年代構成 20代200人、30代300人、40代300人、50代200人、男女比は各世代で半々
(この記事は、日経クロストレンドで2月17日に配信した記事を基に構成しました)
※この記事を含む特集「移り住みたい街ランキング」は日経クロストレンドに掲載されています。
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